つまり、テレビが政権にとってダメージになる情報を積極的に流すようになったから、有権者がそのテレビ報道に煽られて、反政権的な気持ちを強く抱くようになって、その結果、与党が選挙で負けるようになったというふうに考えるべきなのか、逆に、そもそも視聴者の中に政権に対して不信感を抱く人々が増えたから、政権の疑惑を追及する番組企画の視聴率が上がって、その高視聴率に対応してテレビがその種の企画を連発するようになり、一方選挙では、有権者の政権への不信感を反映して、与党が敗北する結果があらわれるようになったと見るべきなのか。

 どちらが正しいのかは正直言って分からない。
 分かるのは、これは、簡単には決められないということだけだ。

 最後に産経新聞とFNNが合同で実施した世論調査の結果を見てみよう(こちら)。

 これを見ると、全体として、安倍政権の支持率は、高齢者になるほど低い。

 しかしながら、5月から7月に至る推移を見ると、最も大きく支持率を減らしているのは10代~20代の女性であり(70.6%→33.8%。同年代の男性は70.8%→44.4%)、数字として最も低い支持率を記録しているのは、40代、50代の女性だ(29.4%、27.8%)。

 この結果を見る限り、テレビに影響されて反政府に翻った人々がいるのだとしたら、それは高齢者であるよりは、むしろそれ以外の層だということになる。

 というのも、高齢者層の政権支持率は、テレビが政権批判報道の比率を高める前の5月から、すでに平均より低かったからだ(同様に5月と7月で比較すると、60代以上の男性は56.6%→30.3%、女性は42.9%→30.1%、全体平均は男性で60.3%→38.6%、女性で52.1%→31.0%)。

 数字の読み方は、こちらの読み方次第で、ある程度どうにでもなるものだ。
 なので、私は、特定の社の世論調査の結果を見て、政権支持層の分布を断定的に語ろうとは思わない。

 ただ、ひとつ言えるのは、現状において「シルバー民主主義」「シルバーデモクラシー」「年寄り民主主義」といったあたりの用語を見出しに持ってきたうえで展開される記事は、高齢者への偏見を利用した眉唾モノの立論だと思って、眉毛に唾をつけてから読みにかかるほうが無難だということだ。

 誰かを悪者にする耳当たりのいい「正論」を、目くらましに使っているだけかもしれない。

 もちろん、ハナから読まないという選択肢もある。
 むしろ、正しいのはそっちかとも思う。

 確率論的に言えば、ウェブ上のテキストであれ、活字であれ、脳にとって有害な文章の方が多いからだ。

 当稿も、読者を選ぶタイプのテキストではある。
 面白くないと思ったあなたにとっては、有害だったはずだ。
 貴重な時間を浪費させてすまなかった。
 ラジオ体操でもして、忘れてくれ。

(文・イラスト/小田嶋 隆)

え、私ですか?
私大文学部哲学科美術史専攻、ルサンチマンの塊です(笑)。

 当「ア・ピース・オブ・警句」出典の5冊目の単行本『超・反知性主義入門』。相も変わらず日本に漂う変な空気、閉塞感に辟易としている方に、「反知性主義」というバズワードの原典や、わが国での使われ方を(ニヤリとしながら)知りたい方に、新潮選書のヒット作『反知性主義』の、森本あんり先生との対談(新規追加2万字!)が読みたい方に、そして、オダジマさんの文章が好きな方に、縦書き化に伴う再編集をガリガリ行って、「本」らしい読み味に仕上げました。ぜひ、お手にとって、ご感想をお聞かせください。