むしろ警戒せねばならないのは、若年層と中高年層の間に無理やりに線を引っぱって分断をはかろうとする人々の論法なのであって、私が個人的にこの5年ほど懸念を抱いているのも、必要のない場所でやたらと世代論を持ち出す論者の語り口であったりする。

 であるからして、私の中では、「シルバー民主主義」は、「老害」と同じく、要警戒なワードとして分類してある。

 誰かの文章の中に、この言葉を見つけたら、私は、以降、警戒モードで文章を読み進めることにしている。
 そうしない時は、その場でウィンドウを閉じる。
 大切なのは、有意義な文章を読むことより、悪影響をもたらすテキストを排除することだからだ。

 2つほど、実例を紹介する。

 ひとつめは、7月24日に配信された山本一郎という個人投資家・作家による「年寄り民主主義とテレビ番組に反政府を煽られて勝敗が決した仙台市長選」というタイトルの記事だ(こちら)。

 記事の中で、山本氏は「シルバー民主主義」という言葉をあえて使わず、代わりに「年寄り民主主義」というより侮蔑的に響くフレーズを採用している。

《民進党と社民党の支持、共産党と自由党の支援を受けた野党統一候補である郡和子女史の当選については、幅広い支持というよりは50代以上女性からの厚い支持とそこまで高くはならなかった投票率によって当選に漕ぎ着けた印象で、反安倍現象以上に「シルバーデモクラシー」と呼ばれる年寄り民主主義の到来のように見えます。》

 と、山本氏は書いている。

「年寄り民主主義の到来」

 という言い方をしていることでもわかる通り、山本氏は、「年寄り民主主義」を、ほぼ「衆愚政治」と同じニュアンスで使っている。

 「年寄り民主主義」は、民主主義そのものの老化ないしは劣化の行き着く果てとして、われわれの社会に「到来」しつつあるもので、おそらく、彼の見立てでは、一種の災厄てなことになるのだろう。

 細かいところを見ていくと、この原稿の中で引用されている最初のグラフは、
「各社出口調査から推定される年代別投票率の推計」
 ということになっているのだが、「各社」が具体的にどの会社とどの会社を指しているのかが示されていない。「推計」が誰によってどのように為されたのかについても説明がない。次の《「仙台市長選の各社平均の速報値(暫定)。安倍政権支持率と得票がやや連動している》とキャプションがつけられているグラフの、「各社」も同様だ。

 《一方、仙台市長選のグループインタビューにおいてはサンプル数が少ないながらも郡和子女史に投票した中高年女性の53%ほどが「特に(郡女史を)支持していない」「郡女史の政策を知らない」と回答しています。》として引用されている、「グループインタビュー」が、誰によってどういうサンプル数で、いつ実施されたものであるのかについても、まったく説明がない。