「いまだに」という言い方は、あるいは正確さを欠いているかもしれない。
 現代の社会は、バブルの時期やそれ以前の高度成長の時代と比べて、むしろ、老人支配の度合いが進んでいる。

 たとえば、1980年代の日本では、各界の先頭に立っているリーダーは、おおむね40代の人々だった。
 雑誌の編集部に出入りするライターはもちろん、雑誌の編集者やデスクも、30代以下の人間が多かった。

 こういう話は、なかなか統計にあらわれにくい事例だとは思うのだが、明治政府の初期や、高度成長期の企業のリーダーを見ても明らかな通り、変革の時代や、好況が続いている社会では、若い人間が活躍することになっている。そして、どうやら、21世紀のわれわれの社会は、そういう時代とは正反対の原則で動いているように見える。

 つい先日、さる広告業界人と話したのだが、かの業界でも、高齢化は、着実に進んでいるらしい。

 彼に言わせると、TCC(東京コピーライターズクラブ)で賞を獲る人間はもちろん、審査員も、応募者も、プレゼンターから司会者からゲストに至るまですべてが高齢化しているのだそうだ。であるからして、賞のためのイベントに集まるメンバーは、30年前からろくに変わっていない。最高齢者は80代に突入している。しかも現役。笑い話ではない。

 広告業界に限った話ではない。
 テレビの業界でも、スタジオに立っている人間の顔ぶれが30年前から変わっていない番組が珍しくない。

 「だって、ひな壇にすわってる若手が軒並み40代ですからね」

 という、40代の「若手」芸人が持ち出してくる定番の話題にしてからが、ネタというよりは、事実そのままの情景描写だったりする。

 その若手氏によれば、自分たちがかれこれ20年も若手の地位に甘んじている理由は、一番上にいるビッグ3(タモリ、ビートたけし、明石家さんま)が健在で、その下の中堅(ダウンタウン、とんねるず、ナインティナイン、爆笑問題などなど)がこれまた盤石だからで、この人たちが席を空けてくれない限り、自分たちは、ひな壇から外に出ることができないのだそうだ。

 まあ、言っていることはよくわかる。
 その通りだとも思う。

 この現状について、
 「老害が地位にしがみついているから若手が出てこれない」
 と見るべきなのか、逆に
 「若手の実力がふがいないから老人たちが生き残っている」
 ととらえるべきなのか、それぞれ、見解の分かれるところだと思う。

 個人的には、お笑い世界の高齢化は、ベテランと若手のどちらか一方に責任を押し付けて良い話ではないと思っている。

 思うに、高齢化は、お笑いというジャンルそのものの衰退ないしは生命力の低下を物語る変化だ。

 おそらくこの先、お笑いは、演歌やロックミュージックが一歩先を歩いているのと同じ形の、「ジャンルまるごとの高齢化」を果たすことになるはずだ。具体的に言えば、演者のみならず聴衆や業界人や関係者すべてを含む人間が、同じように年をとって、そのまま消えて行く、ということだ。

 出版の世界にも似た話はある。
 ライターの世界は、もっと極端かもしれない。
 実際、われわれの世界では、お笑いの世界以上に、若手が出てきていない。