自民党の東京都連は、来たる都知事選において、都連に所属する国会議員や地方議員(都議会議員、区議会議員など)に対して、党が推薦していない候補を応援した場合に除名などを含む処分を科す旨の文書を配布している。問題は、その文書の「下記に揚げる事項を厳守し」としてナンバリングして列挙した、「記」の部分の3つの文のうちの三番目だ。

 その項目は、こう書かれている。

《3.各級議員(親族含む)が、非推薦の候補を応援した場合は、党則並びに都連規約、賞罰規定に基づき、除名等の処分の対象になります。》

 文体は重々しいが、いかんせん馬鹿さ加減が炸裂している。笑わずに最後まで読むことの難しい文章だ。

 都連が、所属議員に対して、非推薦の候補者を応援することを禁じようとした事情はわかる。
 組織として推薦した候補者が決まった以上、それ以外の候補者を応援する行動は、裏切りになる。それを許したのでは、政党が政党である前提が、失われてしまう。当然の措置だ。

 が、これほどまでに「当然」なことは、あえて文書の形にして配布するまでもない。議員として政治活動をしている都連所属の政治家であれば、誰でも知っていることだ。

 同じ理想を抱き、いくつかの共通した政策のために一致団結して活動することを誓ったからこそ、彼らは党と名のつく組織を立ち上げ、政党の名のもとに活動し、選挙に臨み、党費を支払い、党の庇護と指導に従うことで自分たちの政治思想を体現しているはずだ。

 その同志である彼らに、「非推薦の候補を応援するな」という旨の文書を配布するということは、プロのサッカー選手に向かって試合前のミーティングで「いいかい。ボールを手で持って運んじゃダメだよ」という訓示を垂れるのと同じことで、いずれも、言わずもがなのバカな指令だということになる。

 ということはつまり、都連が、このたび、あえて文書を配布してまで所属議員に訴えようとしたのは、3番目の項目の括弧内にある「(親族を含む)」という部分を強調したかったからだと考えざるを得ない。

 彼らは、
「自分たちは、党の方針からの逸脱をこれまで以上に厳しく監視する所存なのであるからして、そのつもりでいるように」
「たとえ、議員本人ではなく、親族が非推薦議員を応援しているケースが発覚した場合であっても、われわれは、甘い顔はしない。必ず処分する。それほどにわれわれは真剣なのである」

 と、そういう気分を込めた文言なのだと思う。

 あるいは、両方の候補者の当選後を勘案して二股をかけておこうとする議員が、親族の名義を使って何らかの選挙協力(方法はいくらでもある)をする可能性をあらかじめ封じておく意味があったのかもしれない。
 これぐらい厳しく言っておかないと、ビラ配りを手伝ったり、集会にちょっとだけ顔を出す議員が現れないとも限らない、と、都連のトップが懸念を抱いているということでもあるのだろう。

 しかし、問題は、都連のトップの誰かが、自分たちの決意の固さと、都連がこのたびの選挙に臨む厳しい態度を強調する目的であえて書き加えたのであったとしても、「(親族を含む)」というこの括弧内の規定が、どこからどう見ても、まるっきり擁護の理屈の見つからない、極めて前近代的かつ腐れマッチョ的な恫喝であった点にある。