振り返ってみれば、今年の3月13日に、公明党が、都民ファーストの会と政策合意を結んで、お互いの候補者を推薦しあうなど、選挙協力を行うことを発表した折、安倍首相は、少なくとも表面的には、動揺を見せていなかった。

 むしろ、毅然とした態度で、事態に対処していたと言って良い。
 NHKが当時報じていたところによれば、翌14日に持たれた安倍首相と二階幹事長の会談で、二階氏が、

「党が一丸となって、勝利のために懸命に戦い、底力を見せたい」

 と述べたのに対し、安倍総理大臣は、

「公明党抜きで勝負するいい機会であり、党をあげてしっかりやってほしい」

 と述べ、党をあげて選挙戦に臨むことを確認したことになっている。

 後知恵で振り返ってみればということではあるが、すでにこの時、自民党の中枢は、状況を見誤っていたことになる。

 つまり、政権中枢部は、ここ何回かの選挙での圧倒的な勝利を経て、自らの支持基盤は盤石のものだという思い上がりを抱くに至っていたわけだ。

 なぜ「思い上がり」という言葉を使ったのかというと、今回の都議選の大敗北ではっきりしたように、自民党のここ数年来の選挙における勝利の大きな部分は、公明党の選挙協力によってもたらされたものであるからだ。

 おそらく、どの選挙でも、ボーダーラインで当選した何十人かの議員は、公明党がもたらした分の基礎票が敵方にまわれば、落選していたはずの人々だ。

 ということは、「公明党抜き」の自民党は、圧倒的な第一党ではないということなのだ。
 安倍首相が、3月の段階で
 「公明抜きで勝負するいい機会」
 と言ったのは、あるいは、アタマのどこかに、改憲勢力として同一歩調を求めるためには、公明党よりも、日本維新の会なり、小池新党なりと組んだ方が話が進めやすいという考えがあったからなのかもしれない。

 そうではなくて、単純に、安倍首相が、自民党単独で選挙に勝ち続けられると考えていたのだとしたら、やはり、彼はどこかの部分で驕り高ぶっていたと評価せざるを得ない。

 今後の課題は、自民党が驕り高ぶった党総裁をこのままいただく形で先に進むのか、それとも、ここで一旦自分たちの足元を見つめて、再出発をはかるのかどうかだと思うのだが、まあ、これは私のような者が上から説教をカマすようなことでもないので、各自しっかりと考えてほしい。出直すなら出直す、突っ走るなら突っ走るで、それぞれ、ふさわしい未来が待っていることだろう。

 もうひとつ、これはメディアではなぜなのかあまり取り上げられていない話題なのだが、私は、今回、むしろ、民進党の負けっぷりの方により強い印象を受けている。
 「なんだこれは」
 と思っている。
 「バカじゃないのか」
 と。