4月にハリルホジッチ前監督が突然解任されてからこっち、代表チームの動静や現状を伝えるメディアの記事や番組のトーンがガラリと変わったことに、私は不信感を抱いている。

 特にハリルホジッチ氏が指揮をとっていた時代、選手選考や戦術などについてあれこれと憶測や邪推を繰り返しては采配批判をしていたスポーツ新聞各紙の論調は、西野さんが代表監督に就任して以降、手のひらを返したように好意的になった。

 こうした記事を眺めながら、私は、

 「メディアがJFA(日本サッカー協会)の顔色をうかがっているというよりは、JFAがメディアの意思を忖度した結果があの解任劇だったのではなかろうか」

 と考えるようになった。

 どちらが王でどちらが従者であるのかはともかく、以来、メディアとスポンサーとファンと協会はひとつの意思を持つ生き物であるみたいに互いの意思を読み取りつつ西野ジャパンを全面支援しているように見える。

 もうひとつ、私がNHKのアナウンサーの言葉を邪推せねばならなかった理由は、ちょうどベルギー戦の前日の深夜に、東京の民放局が制作したデイリーハイライト的番組の冒頭で、日本人監督を後押しする意図を持っているようにしか思えない企画を放送していたからだ。

 当日放送されていたのは、

「日本代表レジェンド緊急招集 第2夜も激アツ! ホンネで2択」

 と題された討論企画で、4人の元日本代表選手に元Jリーグ監督とサッカー通のタレントを加えた総勢6人の有識者が、サッカーについて2択の質問に答えてディベートする内容だった。

 第1問は

「日本代表の監督、今後…… A:日本人 B:外国人」

 というものだった。

 個々の出演者の回答と主張内容はともかくとして、決勝トーナメントの初戦を翌日に控えたタイミングで、どうして次期監督の人選を持ち出さなければならないのかに、私は少なからぬ疑問をいだいた。

 なお、番組は、この質問を持ち出すにあたって、
 「これまで、開催国として臨んだ日韓W杯のケースを除けば、日本代表が決勝トーナメントに進んだのは、日本人監督の時だけです」
 というナレーションを画像とテロップつきで紹介している。

 この誘導的なテロップが効果を発揮したからなのかどうか、出演者の回答は、Aの日本人が4人、Bの外国人が1人、もうひとりは棄権だった。
 つまり、番組としては、次期監督にはぜひ日本人をという結論を匂わせたカタチだ。

 これを見たばかりだったので、私は、

 「またぞろJFAならびに日本サッカー村が、外国人排除に動き出したぞ」

 という予断を抱かざるをえなかった。
 過剰反応といえばたしかにその通りだが、私もなんだか必死だったのだよ。

 ベルギー戦後の取材で、インタビュアーは質問の最後、西野監督に対して

 「西野監督のもと、日本のスタッフで戦ったこの大会の意味、日本らしいサッカー、どんなものでしょうか」

 という問いを投げかけている。

 こういう言葉を聞くと、やはり心配になる。

 われわれは、そんなにまでして純血を保ちたいのだろうか。してみると「オールジャパン」というあの言葉は、やはり「一丸となって」というだけの意味ではなくで、「日本人オンリーで」「純血ジャパンで」というニュアンスを含んでいたのではなかろうかという、最初の疑問に舞い戻ってしまう。

 私たちが追放したハリルホジッチ監督は、たしかに、やっかいな人ではあった。
 これまでの来歴からもうかがえる通り、ハリルホジッチ氏は、チームの雰囲気を盛り上げ、選手を気分良く戦わせるモチベーターとしてはあまり優秀な監督ではなかった。また、対選手のみならず、対クライアントの場面においても、人間関係を構築することが苦手な人物でもあったはずだ。だからこそ、過去、いずれのチームにおいても見事な成績をもたらしていながら、短期間でチームを追われる経歴を繰り返していたのだと思う。

 そう考えれば、突然の解任が発表されたあの時期、日本代表のチーム状態(というのか、チームの雰囲気)が然るべき一体感を欠いていたのであろうことは想像に難くない。