選手諸君がこの展開にいくぶん浮き足立ったかもしれないことを、私は責めない。
というのも、遠く何千キロも離れた日本のテレビの前で画面を眺めていただけの一局外者である私にしてからが、思いがけない2得点の瞬間を目撃して、浮き足立つどころか、ほとんど中空を浮遊する霊魂となって後半の45分を観戦していたからだ。当事者に落ち着けというのはおよそ無茶な注文だ。
で、有頂天になったからなのか、浮き足立ったからなのか、あるいはかえって静かな心になってしまったからなのか、理由はわからないが、とにかく、2つのゴールを決めたあとの30分ほどの間に、わたしたちの代表は、3つの失点を喫することになる。
経過については詳しく述べない。
分析もしない。
わかるはずがないからだ。
というのも、私は、ただただ嬉しさと誇らしさに浮かれて有頂天になって、そのすぐ後に悲しみと悔しさと落胆の底に沈み込み、そのまたしばらく後に気を取り直して、とにかく自分をここまで夢中にさせてくれた代表選手に感謝の気持ちを抱くに至っているというだけで、得点経過や戦術を分析できるような観戦のしかたはついぞできなかったからだ。
とにかく、私としては、選手諸君に感謝の気持ちを伝えたい一心でこの原稿を書いている。その他のことは余談に過ぎない。
試合が終了した後、実況アナの言葉を聴いて我に返った。
実況アナウンサー氏は、試合後のピッチを選手たちが引き上げるなか、インタビュー取材の映像と音声がはいってくるまでの間、日本代表の今大会での活躍をたたえ、その戦いぶりを振り返る話で、時間をつないでいた。
そのとりとめのない時間つなぎの語りのなかで、彼は、今回の代表チームの成り立ちについて
「監督が代わってオールジャパンで挑んだ今大会です」
と言ったのだ。
私は、この時の言葉をとらえて、
《NHKのアナウンサー「監督が代わってオールジャパンで挑んだワールドカップ」っていう言い草はないんじゃないか?》
というツイートを書き込んだ。
このツイートには60件ほどのリプライ(返事)が返されてきた。
リプライの中には、3割ほど、私の考え過ぎをたしなめる主旨のものが含まれている。
つまり、アナウンサーが、単に一丸となって戦っている日本代表の気持ちを描写する意味で、なんとなく使った「オールジャパン」という言葉を、ことさらに外国人排斥の意味にとらえたオダジマの読解の仕方がひねくれているのであって、普通にあの言葉を聴いていた人は、特に抵抗を感じなかったはずだという主張だ。
たしかに、実況アナ氏は、私が引用した言葉のすぐ後に
「長友は、いまはチームが一つになっている。いまが一番いい状態ではないかという話をしていました」
「われわれにもチームの一体感は、ほんとにこの4試合伝わってきました」
と言っている。
とすれば、彼の言っていた「オールジャパン」という言葉のニュアンスは、「日本国籍を持っている日本人だけで構成されている、混じりけのない日本人だけのチーム」ということではなく、「日本の力を結集してみんなで頑張る日本代表」といった程度の意味で言っただけの言葉だったと考えた方が自然だろう。
だとすれば、アナウンサー氏の言葉に対して
《つまりアレか? 監督が外国人だとオールジャパンじゃないという認識なわけか?》
という反応をしたオダジマの感覚が、むしろ過剰反応だったということでもある。
この点は、ご指摘の通りだ。
私は、過剰反応していたようだ。
ただ、私が過剰反応してしまったことには、それなりの理由がある。
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