私個人は、自己啓発書のたぐいが大嫌いなのだが、最近思っているのは、自分が安倍政権に共感を抱けずにいるのは、政策以前に、政権の主要メンバーが漂わせているインチキセミナーくさい啓発臭のゆえなのかもしれないということだ。

 「人づくり改革」という言葉の余韻や「みんなにチャンス!」の最後に付加されている「!」(イクスクラメーションマーク)に、私は、自己啓発本由来のどこまでもチープな世界観と人間観を感じないわけにはいかない。

 でもって、これらのスローガンを掲げている人々が、福祉や社会保障によって最低限の生活を支えることよりも、むしろ貧困の恐怖によって人間をしばき上げることで景気を好転させようとしている植民地監督官に似た人たちであるに違いないという思い込みを、どうしても拭い去ることができないでいる次第だ。

 根拠があって言っていることではない。
 エビデンスだとかファクトだとか、そういうものはひとつも提示できない。
 ただ、そういう感じを抱いているのだ。

 そう感じている一方で、私は、個々の国民の感情やとりとめのない印象の総和が、結局のところ、政治を動かし、政権をドライブするのだと思ってもいる。

 そんなわけなので、壁にハマれないレンガのひとつとして、せめてハンマーを警戒しようと思っている。
 というのも、人づくり改革は、壁にハマれないレンガを打ち砕いてもう一度土に戻す計画を指す言葉であるかもしれないからだ。

(文・イラスト/小田嶋 隆)

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