特定の言葉やフレーズに対して、「薄気味が悪い」とか「好きだ」とか「わくわくする」とか「しっくりくる」とか「怖い」とか「ぞわぞわする」というふうにしてわれわれが抱く、曖昧ながらもそれなりに強烈な直感は、あとになってから振り返ってみると、しばしば何事かを言い当てていたりする。

 たとえば、ずっと昔、

 「会いにいけるアイドル」

 という言葉をはじめて聞いた時に、私が抱いた

「なんだかわかんないけど猛烈にうさんくさい惹句だなあ」

 という直感は、ずっと後になってから、正確な予見であったことが証明されている。

 実際、会いにいけるアイドルは、憧れという感情をより即物的な欲望に微分する過程で発生する握手券を換金する装置そのものだったわけで、その意味では、キャッチフレーズの放射していたうさんくささは、的を射ていたのである。

 「人づくり改革」という一連の言葉は、第一感で自己啓発セミナーのスローガンを想起させる。

 創英ポップ体のポスターが似つかわしい宣伝文でもあれば、担当大臣(←どうせ無駄に前向きな若いヤツ)の体言止めだらけの半端ラップ演説が聞こえてきそうな啖呵でもある。

 いずれにせよ、この言葉は、「人」が「つくれるもの」であることを前提としている。
 もう少し踏み込んだ言い方をすれば、「人づくり改革」は、人間性を操作者の恣意によって改変可能な属性と考えている人間が発案したプログラムであり、その背後には、労働力資本を無限の収益源と考えるブラック企業経営者の強欲と、人民をマスゲームの一画素として扱わんとする権力者の野望があずかっている――というのは、たぶん言い過ぎなので、とりあえず撤回しておくが、ともあれ、「人づくり改革」が、「人間」を「操作」する意図を持った人々による言葉であることだけは明確にしておきたい。

 「一億総活躍」も「教育再生実行会議」も、個々の人間を、全体の中の一個の「駒」として観察する視点において共通している。

 ピンク・フロイドというロックバンドのヒット曲に「Another Brick in the Wall」という歌があって、その中に

 "All in all you're just another brick in the wall"
 「つまるところ、オレらは、壁の中のレンガのひとつに過ぎないのさ」

 という素敵な一行が含まれているという話を、以前、どこかに書いた記憶がある。