五輪は、3年後にそれを迎えるわれわれに、本を捨てられない愛書家にとっての引っ越しや、逡巡を嫌う文筆家にとっての締め切りとよく似た「余儀ない決断」の機会をもたらしてくれる。その強制性に、あるタイプの人々は魅力を感じているのだと思う。

 あれこれ文句をつけている私にしてからが、半ばうんざりしながらも、余儀なく巻き込まれる運命に翻弄される日々を、待ち焦がれているのかもしれない。

 今回は豊洲市場の問題にも触れたかったのだが、五輪の話だけで紙数が尽きてしまった。

 本当のところ、私は、だらだら書いているうちに、豊洲の話題に到達しないまま目安の行数に到達してめでたく逃げ切る結末を望んでいたのかもしれない。それは否定しない。

 というのも、豊洲と築地をめぐるお話は、どこからどう手をつけるにしても、どうにも厄介な話題で、私は、自分がそれをうまく処理する自信を持てずにいるからだ。

 あ。小池都知事も同じ気持ちなのだろうか。

(文・イラスト/小田嶋 隆)

いや、お書きになりたいならば
〆切は延びませんがページは伸ばしますが…

 当「ア・ピース・オブ・警句」出典の5冊目の単行本『超・反知性主義入門』。相も変わらず日本に漂う変な空気、閉塞感に辟易としている方に、「反知性主義」というバズワードの原典や、わが国での使われ方を(ニヤリとしながら)知りたい方に、新潮選書のヒット作『反知性主義』の、森本あんり先生との対談(新規追加2万字!)が読みたい方に、そして、オダジマさんの文章が好きな方に、縦書き化に伴う再編集をガリガリ行って、「本」らしい読み味に仕上げました。ぜひ、お手にとって、ご感想をお聞かせください。