もちろん、このコメント欄の変化を、世論の変化をそのまま反映したものだと考えることは可能だし、寄せられてきてるコメントを虚心に読めば、世間の空気が、まるごと「反日的な言論を許さない」方向に変わったのだというふうに受け止めるほうが、むしろ自然な態度であるのかもしれない。

 しかし、私は、必ずしもそういうふうには考えていない。
 個人的には、厭戦気分に似たものが社会を覆い尽くしていることの結果が、現状の頽廃なのだと思っている。

 つまり、世間のサイト運営者や、ウェブマガジンの編集部が、あの「めんどうくさい人たち」の扱いにうんざりしていることが、あのめんどうくさい人たちを勢いづけているということだ。

 今回の懲戒請求の運動については、PDF化された「懲戒請求パック」が提供されていた事実が伝えられている。すなわち、法律や書類に詳しくないメンバーのために、空欄を埋めれば完成するように作られた、懲戒請求のためのガイドページが用意されていたということだ。

 これは、珍しいなりゆきではない。

 企業への抗議メールやメディア向けの問い合わせの電話(「電凸」と呼ばれる)については、もう10年以上前から、2ちゃんねる(←最近「5ちゃんねる」に変化したらしい)のような共通のネット上のたまり場をベースに、アドレス、書式、要点、注意すべき言葉づかいなどを整理した、詳細なテンプレート(雛形)が共有される流れが定着している。

 要するに、抗議や、感想コメントや、各種ウェブ上のアンケートやamazonの読者コメントのようなものも含めて、インターネットをベースに集約される「情報」は、すべて、「運動」として、組織化され得るということだ。

 以前、当欄でも触れたことがあるかもしれないが、前回のブラジルワールドカップの折、私自身、組織的な抗議活動のターゲットになったことがある。

 具体的な内容は省く(←再炎上するのも面倒なので)が、発端は、私が、とある芸能人について漏らした不用意な発言なのだが、ともあれ、クレーマーたちは、私が出演している民放のラジオ番組のスポンサーに問い合わせのメールを送るという方法で、私を追い詰めにかかった。

 なかなかよく考えられた抗議メソッドだった。具体的には、

  1. 放送局そのものへの電凸やメールは「承りました。ガチャン」で打ち捨てられる。
  2. 激越な抗議文や、乱暴な口調での電話は、「おかしな人」ということで無視される。
  3. 一方、スポンサー筋への紳士的な「問い合わせ」は、企業の立場からは無視できない。
  4. てなわけで、企業→広告代理店の担当者→代理店のラテ局→放送局編成→番組プロデューサーという順序で、特定の出演者をキャスティングしている意図についての問い合わせが届く。
  5. これに対応して、プロデューサーによる出演者への事情聴取がおこなわれ、その結果の書類が、→局編成→広告代理店ラテ局→代理店担当者→スポンサー企業の順に渡って一件落着。

 という手順で追い詰められることになる。

 結果としては、何も起こらなかったわけだが、無事で済んで万々歳というわけではない。
 なぜというに、それぞれの担当者が、少しずつ余計な仕事に駆り出され、少しずつ疲弊したからだ。