であるからして、不当請求をしていた何百人(1人で何通も書いていた人間も含まれていると思うので、現時点では正確な人数はわからない)かの人々は、先方の弁護士たちに、自分たちの個人情報を把握されることになった。
 これは、当人たちにとって、いかにも不都合な展開だったはずだ。

 ともかく、結果として、彼らは、自分たちが懲戒請求をした弁護士に反撃の損害賠償請求の訴訟を示唆され、訴訟を受けて立つのか、和解に応じるべくそれなりの誠意を示すのかの選択を迫られている。

 以上が現時点でのおおまかな状況だ。
 よくできた4コママンガみたいな話だ。

 基本的には、
 「自業自得を絵に描いたような」
 とか
 「自己責任ワロタ」
 てな調子で一笑に付しておけばそれで十分な話題であるようにも見える。

 が、思うに、この事件の示唆するところは、単にお調子者のリンチ加担者が返り討ちに遭ったというだけの話ではない。

 というのも、ネット上のリンチ的言論行為の被害者が、反撃に打って出た今回のようなケースは、むしろ例外的な展開なのであって、多くの場合、被害者は泣き寝入りしているはずだからだ。

 ということはつまり、われわれの社会は、すでに、数を頼んだ匿名の集団クレーマーが様々な立場の少数者に対して思うままにいやがらせを仕向けることの可能な私刑横行空間に変貌してしまっているのかもしれない、ということだ。

 今回、弁護士たちを血祭りにあげようとした人たちが、ふだんターゲットに選んでいると思われる在日コリアンや生活保護受給者は、自前の専門知識と資格を備えた弁護士とは違って、有効な反撃の手段を持っていない人が多いだろう。

 してみると、リンチに加担していた人たちは、今回こそ旗色が良くないように見えるものの、全体としては連戦連勝だったはずで、むしろ、これまで好き放題に気に入らない人々をやりこめてきた実績があるからこそ、今回のヤマで調子に乗って墓穴を掘ってしまった、と考えたほうが実態に近いのだと思う。

 おそろしいことだ。
 事件の経緯を眺めていて、半月ほど前に伝えられた内閣府の「国政モニター」の事件を思い出した。

 その「国政モニター」の事件について、毎日新聞は、以下のように伝えている。

《内閣府が国民の意見を募るために行っていた「国政モニター」のサイトに「在日、帰化人の強制退去が必要なのではないか」「鳩山(由紀夫)元総理を処刑すべきではないか」などの過激な意見が掲載されている。内閣府はサイト内で「お寄せいただいたご意見は誹謗(ひぼう)中傷などを除き、公開している」と説明しているが、事実上、ヘイトスピーチや誹謗中傷が野放しになっている。-略-》(こちら

 このニュースのキモは、「国政モニター」に寄せられた不特定多数の投稿の中に、明らかな民族差別発言や個人を名指しにした処刑勧告のような逸脱発言が含まれていたということなのだが、このこと自体は、さして驚くにはあたらない。

 誰であれ、アタマの中で考える内容を他人に制限されるいわれはないのだし、自由に書かれた国民からの投稿の中に、いくらか不穏当な内容の文章が含まれていることそのものは、大いにあり得る話でもある。