一連の不倫告発記事に、私は、毎度毎度気持ちをくじかれている。
 文章を書く仕事の下劣さを思い知らされるからでもあるが、それ以上に、あの記事を喜ぶ読者の多さに無力感を抱くからだ。

 心をこめて作った料理よりも、土足で踏んで作ったピザの方が喜ばれるのだとしたら、誰がいったい大真面目にスープを仕込んでいられるだろう。

 今回、マクロン夫妻の結婚を「大恋愛」と呼んだ朝日新聞と、昨年来他人の婚外交渉を「ゲス」だ「不倫」だと言っては攻撃している週刊文春は、別の会社の刊行物であり、会社同士も必ずしも仲の良い関係ではない。その意味では、彼らの報道を一緒くたにしたうえで、「ダブルスタンダード」だとする指摘は、お門違いだろう。

 公人の私生活であっても、犯罪にかかわる話でない限り、男女の間のできごとには介入せず、できれば論評もしないのが大人のたしなみだ、と私は考えている。

 もちろん、この考えに賛成できない人がいるのは当然だ。
 退屈した人たちが他人の色恋沙汰に興味を持つことも仕方のないことだとも思っている。

 しかし、ともかく、夫婦の間で、相手に言えない秘密を持つことが、仮に、恥ずかしいことであるのだとしても、その他人の秘密を暴いて金を稼ぐことは、それ以上に恥ずかしいことだという認識は、できれば共有してほしい。というのも、ゲスという言葉は、不倫をはたらいている人間よりも、それを暴いて正義面をしている人間が受け止めるべき言葉だと思うからだ。

 まあ、こんなことを言っても、どうせゲスの耳には届かないのだろうが。

(文・イラスト/小田嶋 隆)

「ゲス●ックマガジン」の西条記者がフランスの新大統領に
どんな質問をするか聞いてみたい。はい、私もゲスです。

 当「ア・ピース・オブ・警句」出典の5冊目の単行本『超・反知性主義入門』。相も変わらず日本に漂う変な空気、閉塞感に辟易としている方に、「反知性主義」というバズワードの原典や、わが国での使われ方を(ニヤリとしながら)知りたい方に、新潮選書のヒット作『反知性主義』の、森本あんり先生との対談(新規追加2万字!)が読みたい方に、そして、オダジマさんの文章が好きな方に、縦書き化に伴う再編集をガリガリ行って、「本」らしい読み味に仕上げました。ぜひ、お手にとって、ご感想をお聞かせください。