W杯の本番では、世界の強豪でさえ思うままの華麗なサッカーは封印せねばならない。
 まして日本のようなW杯選出枠の最下層に属するチームは、走れる選手や身体の強い選手を揃えて守備に備えなければならない。そうでないと戦いのスタートラインにさえ立てない。

 と、その水を運ぶことの多いチームは、どうしても堅実でありながらも華のないチームになる。
 この至極単純な事実こそが、おそらくは、ハリルホジッチが私たちに伝えようとしたことだった。

 そして、彼が作ろうとしていた、地味で堅実で面白みには欠けるものの、3回戦えば1回は上位チームを食うかもしれないチームは、多数派のライトなサッカーファンには我慢のならないぞうきんがけサッカーだったということだ。

 でもって、わたくしども世界のサッカーの辺境で夢を見ている哀れなサッカーファンは、どうせ勝てないのなら、せめて自分たちらしいサッカーを貫いて世界を驚かせてやろうじゃないかてなことを発想するに至る。

 敗北に目がくらんで近視眼的になるのは、うちの国の民族の考え方の癖みたいなもので、前回のW杯でも同じだったし、さらにさかのぼれば、先の大戦でも同様だった。つまり、ミッドウェーで一敗地にまみれ、ガダルカナルで壊滅的な敗北を喫したのち、自分たちの戦術や戦力がまったく敵に通用していないことを思い知らされたにもかかわらず、それでもわれわれは、自分たちの「美学」だかを貫いて、美しく散ることを願ったわけで、つまるところ、ウクライナに敗北したあげくになぜなのか華麗なパスサッカーを志向するに至ったわれら極東のサッカーファンの幻視趣味は、帝国陸軍末期の大本営の机上作戦立案者のメンタリティーそっくりだということだ。

 われわれは、醜く勝つことよりも、美しく敗北することを願っている。
 ずっと昔から同じだ。われらニッポン人はそういう物語が大好きなのだ。

 悲しい結論になった。
 6月のW杯で、私は、自分たちの代表チームに、美しく散ってほしいとは思っていない。
 むしろ、醜く勝ってほしいと願っている。

 本当は美しく勝つのが一番良いのだが、それは百年後のことだ。
 私のような苦しい時代を生きたサッカーファンは、百年後を自在に夢見ることができる。
 簡単に身につく能力ではないが、みなさんにもぜひ習得をおすすめする。
 ひとたびわがものとすれば、世界はたなごころのなかにある。

(文・イラスト/小田嶋 隆)

え、オダジマさんと「酒」のイベント?!
誰だ、こんなの企画したのは……。あ、弊社か。

小田嶋隆×葉石かおり×浅部伸一
「飲むべきか、飲まざるべきか、それが問題」
上を向いてアルコール』(ミシマ社)
酒好き医師が教える最高の飲み方』(日経BP社)コラボ鼎談

 出版局のT内です。酒飲みなら誰もが経験する「ああ、飲みすぎちゃったな……どうして途中でやめられなかったんだ……」という後悔。特にひどい二日酔いのときは「ひょっとして、アル中になってしまうんじゃ…」と心配になることもあるでしょう。

 アルコールを嗜む人にとって、他人事ではない「アル中=アルコール依存症」。でも、怖がりすぎる必要はありません。まず、敵(アル中)を知りましょう。アル中から抜け出し、酒を断って20年の人気コラムニスト、『上を向いてアルコール』を上梓した小田嶋隆さん。そして、『酒好き医師が教える最高の飲み方』の著者である、酒ジャーナリストの葉石かおりさんと、監修者で肝臓専門医の浅部伸一さんが語り合います。

 なぜ、人はアル中になるのか?
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 壮絶! なのに抱腹絶倒の『上を向いてアルコール』、医師なのに酒好きな人たちに健康的な飲み方とウンチクを聞いた『酒好き医師が教える最高の飲み方』の著者たちが語る、面白くてためになるトークをお楽しみください!

時間 2018/05/11 Fri 20:00~22:00 (19:30開場)
場所 本屋B&B
東京都世田谷区北沢2-5-2 ビッグベンB1F
入場料
■前売1,500yen +(1 drink order 当日現金払い)
■当日店頭2,000yen + 1 drink order

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