政権のトップが他民族への態度を硬化させたからといって、ただちに差別的な犯罪が増えたり、ヘイトグループ(人種や宗教に基づく差別・憎悪を扇動する集団)の活動が活発化するものなのかどうか、たしかなところはわからない。が、政権の態度と世論が、相互依存的な関係にあることは事実だと思う。

 差別的な言論を容認する政府が実権を握っていれば、世論は差別を助長する方向に動き勝ちになる。
 また、世論が全体として差別を強化する方向で推移しているのであれば、政権の側もそうした世論におもねった態度を取るようになる。

 今週号の週刊現代は、巻頭で
「儒教に支配された中国人・韓国人の悲劇」
 というケント・ギルバート氏の寄稿を掲載している(こちら)。

 リンク先の目次でも確認できるが、新聞に掲載されている目次では、
《国より家族、公より私――――「歪んだ儒教思想」が世界でヒンシュクを買っている》
《アメリカ人だから断言できる「日本人と彼らはまったくの別物、全然違う」》
 という内容紹介が印刷されている。

 ほかにも
《ぶっちゃけ座談会 下品で幼稚、自分だけが良ければいい人たち 中国人は中国人が一番嫌い》
 という座談会記事の見出しも掲載されている。

 記事の本文はまだ読んでいないので、内容についてはどうこう言えないのだが、仮にも日本を代表する総合週刊誌がこういう見出しを掲げた広告を打っていることに驚いている。

 世論の動向と政府の態度には強い相関がある。
 どちらがどちらを主導し、いずれの側が相手の側を支配しているのかを、単純に断定することはできない。

 おそらく、両者は相互に影響を与えつつ、互いを引っ張っているのだと思う。
 アメリカの例でも同じことだが、一旦こんなふうに動き始めてしまっている世論の動向を、いったいどうやって引き戻したものなのか、正直なところ、見当がつかない。

 搭乗便の変更を一方的に通告されて、おとなしく従ってしまったあの時のことを思い出している。

 私は、トランジット先のシンガポールのチャンギ空港で、乗継便を待つ4時間の間、不必要な土産物とバカな文房具を山ほど買った。ほかの乗客もほぼ同じだ。クレジットカードと待ち時間を持たされた日本人は、際限なくモノを買う人間になる。あるいは航空会社の狙いはそこのところにあったのかもしれない。

 引きずり下ろされるのとどっちがマシなのかは、分からない。
 だが、もう一度ああいうことにならないように、できれば、抗議するに足るボキャブラリーを備えた人間になりたいものだと思っている。

(文・イラスト/小田嶋 隆)

国内線ですが、何度応募しても振り替え便(とお小遣い)に当たりません。
でも、いつかは、と思っています。

 当「ア・ピース・オブ・警句」出典の5冊目の単行本『超・反知性主義入門』。相も変わらず日本に漂う変な空気、閉塞感に辟易としている方に、「反知性主義」というバズワードの原典や、わが国での使われ方を(ニヤリとしながら)知りたい方に、新潮選書のヒット作『反知性主義』の、森本あんり先生との対談(新規追加2万字!)が読みたい方に、そして、オダジマさんの文章が好きな方に、縦書き化に伴う再編集をガリガリ行って、「本」らしい読み味に仕上げました。ぜひ、お手にとって、ご感想をお聞かせください。

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