「どうしてこの人は、これほどまでにロボットライクに振る舞っているのだろうか」
 「人間らしい言葉を使うと、自分の中の何かが決壊して本音が漏れ出てしまうかもしれないから、それでこの人はスタートレックに出てくるバルカン人のスポック氏みたいなしゃべり方を続行しているのであろうか」
 「要するにこの人は、あらかじめ準備したシナリオから絶対に外に出ないことを自らに言い聞かせるために、この異様に格式張った日本語でしゃべることを自らに課しているのだな」

 思うに、彼は、自分の言葉から「トーン」や「表情」や、「ニュアンス」を消し去ることを意図していたわけで、だからこそ、ああいうふうな人工言語で語る必要を感じていたはずなのだ。

 面白かったのは、共産党や民進党の議員さんからの辛辣で高圧的でともすると失礼にさえ聞こえる厳しい質問に対しては、あくまでも冷静に定型的に無表情を貫いて回答していた佐川さんが、唯一動揺したように見えたのが、優しい口調で投げかけられた無所属クラブの薬師寺みちよ議員の質問に触れた時だったことだ。

 佐川さんが動揺していたように見えたというのは、私がテレビ画面を見て感じた印象にすぎない。
 もしかすると、彼はまるで動揺していたわけではなくて、単に、質問を意外に感じて、目を見開くような表情をしたということに過ぎなかったのかもしれない。

 でも、私の目には、その時、佐川氏が一瞬涙ぐんでいるように見えた。そして、そんな自分をおさえこむべく、あえて目を見開くようにして薬師寺議員を見返すことで自分の中の感情に対処しているように見えた。

 まあ、この見方は、私が自分の側の思い込みを投影しているだけの話であるかもしれないので、断定はしない。ただ、この時の佐川さんの答え方のトーンが、多少それまでと違っていたことは確かだと思う。

 薬師寺議員は、こう尋ねている。

 「ありがとうございます。最後に私、これで参議院の最後でございます。今回のこの証人喚問は、日本全国の公務員の皆様方も注目してらっしゃいます」
 「まさに公務員の皆様方の信頼を失墜させるに値するものだということでございますので、しっかりとそのメッセージを発信していただきたいんですけれども、どのように今お考えになってらっしゃいますか」

 意外な方向からの問いかけである。
 これに対して、佐川氏は
 「今ご指摘をいただきましたように、これで全国の公務員の方の信頼をおとしめるということがあったとすれば、本当に申し訳ないことだと思っております。深くおわび申し上げます」

 と言って、深々とアタマを下げている。