わかっている。
 幼児が持っている「生まれもったバラつき」は、幼児が幼児であるうちに(つまり可塑的であるうちに)「矯正」すべきだと考える人々は、私の言うことを受け容れないだろう。

 そういう人の目から見れば、私は失敗した教育の結果ということになるはずだ。
 たしかに、私は甘やかされて育った人間で、ほとんどまったく矯正らしい矯正を受けていない。

 私個人は、私のような、矯正されていない人間が胸を張って生きられる社会が良い社会だと思うのだが、そう思わない人はそう思わないだろう。

 だけど私は、あなたを矯正しようとは思わない。
 なので、できれば、私を矯正することは断念してほしい。

 そんな、私のような人間と、あなたのような人間が同じひとつの空間の中にいるというこの一点だけを見ても、「全国民が心を一つにする」という、教育勅語ならびに五箇条の御誓文の言う理想が、空疎であることの証明になると思うのだが、あなたはこの見解にも賛成しないのだろうか。

 もちろん、それはそれでまったくかまわないのだが。

(文・イラスト/小田嶋 隆)

でも「オダジマタカシ顕彰小学校」にも
あまり我が子を入れたくありません…

 当「ア・ピース・オブ・警句」出典の5冊目の単行本『超・反知性主義入門』。相も変わらず日本に漂う変な空気、閉塞感に辟易としている方に、「反知性主義」というバズワードの原典や、わが国での使われ方を(ニヤリとしながら)知りたい方に、新潮選書のヒット作『反知性主義』の、森本あんり先生との対談(新規追加2万字!)が読みたい方に、そして、オダジマさんの文章が好きな方に、縦書き化に伴う再編集をガリガリ行って、「本」らしい読み味に仕上げました。ぜひ、お手にとって、ご感想をお聞かせください。