で、そのフレドの死を伝える部下の耳打ちにこたえるマイケルの顔のアップで、パート2の画面は幕を閉じる。結局あの映画は、ひとつのマフィアのファミリーの興亡の歴史を描いているわけだが、マイケルという一人の人間に絞って言うなら、快活で無邪気だったはずの一人の青年が、組織の仕事に従事する中で、いつしか冷徹な殺人者に変貌して行く姿を追った物語だということもできる。

 金正恩委員長本人は、冷酷に敵を殺す自分に酔い、成長したくらいに思っているかもしれないが、われわれから見れば、海外での白昼堂々の暗殺など狂気そのものだ。

 もちろん、北朝鮮だけが特別なわけではない。
 「常在北朝鮮」ということわざもある。
 無いかもしれないが、そういう時は作れば良い。

 どこの国の企業であれ政党であれ、独裁化が進んでいる人間の集団では、他人の見解や人生を踏みにじることをなんとも思わないリーダーが権力を握ることになる。この傾向に例外は無い。独裁化の進んだ組織では、人間の尊厳はどこまでも軽視される。

 リーダーが独裁的な人間だから組織が独裁化するのではない。
 むしろ、組織から適正な権力分散のシステムが失われていく過程の中で、リーダーがライバルや不満分子を粛清するという手順を身につけ、独裁化へのストーリーが進むことになっている。そして、それだけが統制を維持する手段になっていく。今回、国外での暗殺にまで踏み切ったのは、やはりそれほどに、あの国の内部がばらばらになってきたということなのだろう。

 で、リーダーはいつしか粛清と恫喝でしかものを言わないようになり、ある段階から後は、粛清を避けること(できれば他人に押し付けること)が、組織の全員の目的になる。

 ひどい話になってしまった。

 国の指導者を狙える立場にありながら、そこから逃れようと七転八倒していたと思しき金正男氏が、哀れでもあり、かつ、人間として当然の反応だったようにも見える。
 それゆえに、彼の暗殺は北朝鮮の、独裁体制の狂いっぷりを嫌というほどわれわれに見せつけた。

 詩を編む時間も無く殺された彼が最後に見たのは何だったのか。誠に不謹慎だが、ディズニーランドが天国にもあれば、と、ほんの少しだけ思う。

「それをやっちゃあおしまいよ」
と、あの世で嘆いているかもしれません。
全国のオダジマファンの皆様、お待たせいたしました。『超・反知性主義入門』以来約1年ぶりに、小田嶋さんの新刊『ザ、コラム』が晶文社より発売になりました。
全国のオダジマファンの皆様、お待たせいたしました。『超・反知性主義入門』以来約1年ぶりに、小田嶋さんの新刊『ザ、コラム』が晶文社より発売になりました。

 全国のオダジマファンの皆様、お待たせいたしました。『超・反知性主義入門』以来久方ぶりに、小田嶋さんの新刊『ザ、コラム』が晶文社より発売になりました。以下、晶文社の担当編集の方からのご説明です。(Y)

 安倍政権の暴走ぶりについて大新聞の論壇面で取材を受けたりと、まっとうでリベラルな識者として引っ張り出されることが目立つ近年の小田嶋さんですが、良識派の人々が眉をひそめる不埒で危ないコラムにこそ小田嶋さん本来の持ち味がある、ということは長年のオダジマファンのみなさんならご存知のはず。

 そんなヤバいコラムをもっと読みたい!という声にお応えして、小田嶋さんがこの約十年で書かれたコラムの中から「これは!」と思うものを発掘してもらい、1冊にまとめたのが本書です。リミッターをはずした小田嶋さんのダークサイドの魅力がたっぷり詰まったコラムの金字塔。なんの役にも立ちませんが、おもしろいことだけは請け合い。よろしくお願いいたします。(晶文社編集部 A藤)

この記事はシリーズ「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。