こっそり東京ディズニーランドに行くためにわが国に密入国を繰り返し、とうとう成田空港で拘束されたりする。その気ままさとずっこけぶりには、「異母弟に疎まれて、居場所がない兄」という哀愁を感じさせる。デキのいい異母妹の「さくら」と、人はいいが普通の暮らしに適合できない兄、フーテンの寅の組み合わせをそこはかとなく感じさせるではないか。

 いや、葛飾・柴又の町工場の話をしたいわけではない。
 無茶な例えだとは承知している。

 金正男氏がいかに呑気そうな風体であろうが、あの国の暗部にまったく触れていないとは考えられない。金正恩氏がおぼっちゃま風に見えたとしても、権力闘争の過程でいくつもの血を流してきたことははっきりしている。

 ローマ帝国でも漢帝国でもブルボン王朝でも良いが、王朝の中にいる人間は、仮に本人が正常でも狂った行動をとることになる。絶対権力は絶対的に腐敗する、という言葉があるが、チェック&バランスの機能をその身内に備えていない権力は、腐敗に至る前の段階で、必ず狂気に陥る。

 独裁国家は、「敵を殺さなければ、自分が殺される可能性を否定できない」という恐怖と先制攻撃の構造をシステム内にインストールしている。だって、他人の生殺与奪の権を握った人間が、その権力(他人の生殺与奪の権を握っているということ)を維持し続けるためには、実際に他人を殺し続けるほかにどうしようもないからだ。

 そう考えてみると、北朝鮮のような国のトップに就いた人間は、どう避けようとしても、人を殺さないわけにはいかなくなるのだと思う。

 歴史を見れば明らかな通り、独裁的な権力を世襲によって受け継ぐ設定で動いている王朝は、ほぼ必ず、権力の後継をめぐって内紛をかかえることになっている。しかもその内紛は、多くの場合、現行の権力後継者から見て兄弟にあたる人間を物理的に殺害することで解決される。

 いまだに人気の高い「三国志」の中にも、血を分けた兄弟が相争って互いを殺そうとするエピソードが繰り返し登場する。

 中でも有名なのは、三国のひとつ魏の王である曹操の長男曹丕と、三男曹植をめぐるお話だ。
 以下、ざっと内容を紹介する。参考になると思うので。

 曹丕は、曹操の長男であり、血統から言えば正統な後継者だ。

 一方、三男の曹植は、幼少よりその才華の高さで人々を惹きつけた人物であり、特に詩の才能は天下に隠れのないものだった。ために父である曹操もその才能を特に愛したと言われている。

 やがて、配下の将軍の中に曹植をひいきにする武将が現れはじめる。先を読んで、曹植の才に自らの将来を託する計算を働かせる役人も出てくる。