だから、自分が憤っていることや悲しんでいることを「感情的になっている」からという理由で恥じる必要はない。
 あるタイプの論者は、「起こっている事実をあるがままに評価することができない人間は、つまるところ現実から目をそらしているのだ」という言い方で、世界の変貌を嘆く人々や、失われつつある正義に憤る人々を嘲笑する。

 ところが、実際に彼らがやっていることを見ると、当人が「あるがままに」評価していると思っている、感情を切り離したその彼らの見方は、単に現状を追認しているだけだったりする。

 であるから、
「難民に対して門戸を閉ざすという選択は、一見冷酷な施策であるように見えますが、これもまたアメリカの安全という別の理想を実現に近づけるための現実的なステップの一段階なのです」
 てな調子の冷静ぶった説明を、私は信じない。

 トランプ大統領の就任に反対するデモ(Women's March)が大きく報じられていた1月22日の午後、元大阪市長の橋下徹氏が、こんなツイートを投稿した。

《(トランプ大統領)いわゆるセレブの反トランプデモ。それをやるなら自分の収入の大半を経済的困窮者に寄附してよ。自称インテリが一銭も金を出さずに文楽を守れ!と口だけでカッコつけてたのとよく似てる。空の言葉より行動を、のトランプワードが身に染みる。》(こちら

 これに対して、私は、氏のツイートを引用した上で、以下のようにつぶやいている。

《(1)「セレブのデモ」という言い方は印象操作だよ
(2)寄付とデモは二項対立の行動ではない
(3)誰が「インテリ」を「自称」しているのか
(4)文楽協会への補助金見直しへの反発と反トランプデモは別の話
(5)デモという「行動」をツイッター上の「言葉」で叩いているのは誰か》(こちら

 政治の手が届かない貧困を、寄付で集められた金銭が救っている事実に目をつぶろうとは言わない。
 しかし、社会の中にある困難や不正に対して、民間の寄付の恩恵によってではなく、政治の力で立ち向かうのが政治家の役目であることを思えば、デモの隊列の中にいる人々に向かって、デモをやめて寄付をすることを求めることは、筋違いであるのみならず失礼でもある。

 このツイートを引用したのは、橋下徹氏を非難したいからではない。
 彼の声を紹介したのは、トランプ大統領の登場を歓迎している人々が日本人の中にも少なくないことを知ってもらいたいと思ったからだ。

 日本に伝わってくるメディアの報道を見ていると、トランプ大統領が打ち出している大統領令は、どれもこれも無茶な話で、米国の前提をひっくり返す暴挙であるように思える。
 が、実際には、世界中から批判を浴びているあの大統領令は、国民におおむね支持されている。

 ロイター通信が全米50州で実施した世論調査によれば、トランプ米大統領による中東・アフリカ7カ国からの一時入国禁止や難民受け入れ停止をした大統領令の是非に関して、49%の国民が賛成している。この数字は、反対の41%を上回っている(こちら)。

 トランプ大統領がはじめた変革は、無視できない数の支持を受けている。
 というよりも、米国には、これまでの米国に満足していない人たちが、それだけたくさんいるということだ。

 日本にも、トランプ大統領を支持する人たちがたくさんいる。
 これは私の臆断に過ぎないのだが、日本のトランプ支持層の大きな部分は、トランプ氏の登場を嘆き悲しんでいる人たちを嫌っている人々によって占められている。