しかし、大切なのは取り乱さないことではない。取り乱しがちな話題を、できる限り正確に伝えることだ。

 結論を述べる。

 自由業者は苦しい。
 仮想通貨も苦しい。

 自由業の苦しさと仮想通貨の苦しさは、それらが幻想を足場にしている点と、失望した瞬間に消滅してしまう点で非常によく似ている。

 だから私は仮想通貨に投資しようとは思っていないものの、そのうたかたの天に投げかけられた憧れの指先みたいな経済単位には一定のシンパシーを抱いている。

 仮想通貨は、われわれが真の自由を手に入れた時にはじめてその十全な機能を発揮することになるだろう。
 ということは、それまでの間、自由を目指す人間が損をする時代が続くということだ。

 自由は、いまのところ、ベネフィットとしてではなく、コストとしてわれわれの前にある。
 先のことはわからない。冒頭で言った通りだ。私は一歩も前に進んでいない。

(文・イラスト/小田嶋 隆)

自由を売った代償に我々は、取材先の方から見ると
「あ、●経の人」と分かるくらい会社の色が付くらしいです。

 当「ア・ピース・オブ・警句」出典の5冊目の単行本『超・反知性主義入門』。相も変わらず日本に漂う変な空気、閉塞感に辟易としている方に、「反知性主義」というバズワードの原典や、わが国での使われ方を(ニヤリとしながら)知りたい方に、新潮選書のヒット作『反知性主義』の、森本あんり先生との対談(新規追加2万字!)が読みたい方に、そして、オダジマさんの文章が好きな方に、縦書き化に伴う再編集をガリガリ行って、「本」らしい読み味に仕上げました。ぜひ、お手にとって、ご感想をお聞かせください。

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