この2年ほど、当たるを幸いに有名人の婚外交渉や私生活上の不品行を暴き立てては、斯界に話題を提供してきたいわゆる「文春砲」が、ここのところ自爆気味に見える。

 特に、先週号(1月25日号)で、小室哲哉さんの不倫疑惑を暴露した記事への反発は、これまでにない規模の「炎上」と申し上げてよい騒ぎを惹起している。

 今回は、文春砲自爆の話題を蒸し返したい。

 蒸し返したいという書き方をしたのは、この炎上騒動がおおむね終息したと判断している読者が少なくないと思ったからだ。

 私は、終わりだとは思っていない。
 むしろ、始まったばかりだと考えている。

 何が始まっているのかは、以下に書き進めるなかでおいおい明らかにしていくつもりだ。

 2016年の12月27日、私は以下のようなツイートを投稿した。

《2016年は週刊誌が死んだ年だと考えている。いわゆる「文春砲」で息を吹き返したと思っている人もいるんだろうけど、部数の復活も一瞬の話で、要するにああいう品の無いスキャンダリズムに舵を切った時点で真っ当なメディアとして自殺したわけだよね》(こちら

 今回の騒ぎは、私が一昨年の年末に書きこんだ観察が、事実として顕現している姿に見える。

 いまわれわれが目撃しているのは、昭和の人間が考えていた「週刊誌ジャーナリズム」なるものが死滅して、新しい何かが誕生する過程で繰り広げられている愁嘆場だということだ。

 小室哲哉さんの私生活をあからさまに暴露した今回の記事への評価は、観察する者の立場によって様々だとは思うのだが、個人的には、小室氏本人の口から

《「お恥ずかしい話ですが、普通の男性としての能力というものがなくて」》

 という発言を引き出す事態を招いた一点だけをとっても、残酷な仕打ち以上のものではなかったと考えている。

 何十人という記者と全国ネットのテレビカメラの前で、自分の男性機能の喪失を告白せねばならなかったご本人の気持ちはいかばかりであったろうか。

 記者会見の当日、私は

《個人的な見解ですが、私は、不倫をしている人間より、他人の不倫を暴き立てて商売にしている人間の方がずっと卑しいと思っています。》(こちら

 というコメントをツイッターに書きこんだ。

 特に目新しい感慨ではない。目からウロコが落ちるような発見を含んでいるわけでもなければ、思わずヒザを打つ秀抜な修辞がほどこされているわけでもない。その、どちらかといえば凡庸な感想ツイートが、現時点で1万件以上のリツイートと、2万件以上の「いいね」を獲得している。それほど、共感する人が多かったということだ。

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この記事はシリーズ「小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 ~世間に転がる意味不明」に収容されています。WATCHすると、トップページやマイページで新たな記事の配信が確認できるほか、スマートフォン向けアプリでも記事更新の通知を受け取ることができます。