しかし、彼らは本来、生活保護家庭に寄り添うべき立場の人々だ。
 生活保護家庭の相談に乗り、悩みごとに耳を傾け、生活再建へのアドバイスを提供し、経済的に自立できるように促すのが、彼らの本来の職務であったはずだ。

 その彼らが、生活保護家庭に向けられる世間の蔑視や偏見を助長するようなメッセージを書き込んだジャンパーを着て、本人たちの目の前に現れたのは、普通に考えて「いやがらせ」としか解釈のしようがない。
 彼らは、それを集団でやっていたわけだ。

 不正受給が良くないことは誰もが知っている。
 不正受給者がいるおかげで、本来なら受給できるはずの家庭に生活保護の恩恵が行き渡らずにいることも事実だ。

 とすれば、不正受給者を摘発し、追及し、罰することも大切な仕事である。

 不正受給の割合が相対的にわずかだからといって、それを無視して良いということにはもちろんならないし、0に近づけなければいけないこともその通りだ。しかし、仕事の優先順位として、市の生活保護担当職員やケースワーカーがより注力すべきなのは、むしろ「受給漏れを無くすこと」の方であるはずだ、ということを私は言っている。

 少なくとも、不正受給をバッシングすることで正当な生活保護受給者に肩身の狭い思いをさせることは、適切な態度とは言えない。

 ジャンパーに書かれていた英文は、聞けば「機動戦士ガンダム」由来の有名なセリフであるらしいのだが、このあたりにも、ヤンキー臭を感じないわけにはいかない。

 いや、ガンダムがヤンキーなコンテンツだと言いたいのではない。
 64人もの大の男(報道された記事からは、ジャンパーを購入した64人の性別はわからないが)が、アニメから引用したセリフを背負ったジャンパーを作るということのはしゃぎっぷりに、ヤンキーじみた集団性を感じ取るということだ。

 以前から何度も繰り返し述べていることだが、わたくしども日本人は揃いの衣装を身につけると、およそ3割方知能指数が低下することになっている。

 逆に言えば、普段より3割ほど考えの浅い人間になって、チームのために粉骨砕身するべくしてわれわれはユニフォームを作るわけで、法被であれ浴衣であれスタジアムジャンパーであれ、揃いのユニフォームに袖を通した時点で、われわれは、現代人であるよりは、「軍団」であるとか「組員」であるとかいった前近代の存在に生まれ変わるのである。

 もう1回別の言い方をすれば、このことは、ユニフォームのようなものを通じて実現される前近代性が、われわれの社会の集団にはじめて規律を与えているということでもあるわけで、要するに私たちは、封建的なマナーでしか集団的な行動をとれないのである。

 話を元に戻す。
 産経新聞の「産経抄」の書き方は、朝日新聞ともNHKとも違っていて、

「生活保護『なめんな』…正義の声だけがまかり通れば現場は疲弊するばかり」

 という見出しで記事を書いている(こちら)。