20年前に比べて、中国国内の魚肉消費量が急増していることも、彼の国の漁業が漁獲量を増やし続けていることもその通りではある。が、それでもなお、わが国の水産資源消費量と漁業の大きさは依然として他国を圧倒している。

 ウナギに関する日中両国の養殖生産量については、WWFジャパンという民間の環境団体(こちら)が、2015年の7月に「ウナギの市場の動態:東アジアにおける生産・取引・消費の分析」というレポートを発表している(こちら)。

 この資料を見ると、統計のとり方によって異同はあるものの、1990年代以降中国養殖ウナギ生産量が飛躍的に増大して、2010年代には他を圧していることがわかる(資料13ページ、図2、世界のウナギ養殖生産量)。

 引き比べて、日本の養殖ウナギ生産量は、1990年以降ずっと減少し続けている。
 この図を見て、
 「ほら、やっぱり元凶は中国じゃないか」
 と決めつけるのはそんなにむずかしいことではない。
 実際に、そう言っている人たちはたくさんいる。

 しかしながら、簡単にそう決めつけて良いものではない。
 なぜなら、その中国の養殖業者から食品としてのウナギを輸入しているのは、日本のスーパーと商社であり、その彼らが持ち込んだウナギを世界中の誰よりもたくさん食べているのはほかならぬわれら日本人だからだ。

 ウナギ絶滅のわかりやすい新たな「悪役」として、中国が浮上してきたことは、実際に中国の漁民がウナギの稚魚を大量に捕獲しているという意味でも、世界最大のウナギ消費国であるわたくしども日本人が、ウナギについての罪の意識を転嫁する先を得たという意味でも、ウナギにとっては不幸なことだったと申し上げなければならない。

 おそらく、そう遠くない将来、われわれは、さんざんにウナギを食い散らかしたあげくに、ウナギの死滅については、その原因を中国の強欲に求めるテのお話を飲みこんで済ますことだろう。そうやって国民的な胸焼けを晴らしているうちに、あのヌルヌルした生き物のことは、じきに忘れてしまうのだ。

 安易に中国のせいにするのが間違いだというのなら、ウナギの絶滅危機に責任を負うべき人間が、どこにいるのか名指ししてみろ、という感じのツッコミを入れてくる人たちがいるはずだ。

 お答えしよう。

 きれいごとだと思うかもしれないが、私は、ウナギの絶滅については、稚魚を捕獲している人々(専業の漁業者のほかに素人を含む密漁者も多いと言われている)や、養殖業者やそれらを監督するべき水産庁のお役人、ほかに、輸入商社、ウナギ料理屋、さらには、小売業者、弁当業者、食品スーパー、そして消費者であるわれわれ自身を含むすべての人間が責任を感じなければならないと考えている。