全4942文字
ピッツバーグ・パイレーツの球団収入(2008年)

 2008年のパイレーツの球団収入は1億4599万ドル。ピッツバーグという地方都市に本拠地を置くだけあって、その収入はMLB球団の中でも低く、常に30球団の中で下位4分の1に入っているイメージの球団です。

 ここで特筆すべきは、パイレーツが自力で稼いでいるのは総収入の52%に当たる約7600万ドルに過ぎず、残りの約7000万ドルは分配金で賄われているという事実です。グラフからも分かるように、MLBには「分配金(1)」(リーグ収入の分配)と、「分配金(2)」(球団収入の再分配)の2種類の収益分配制度が存在します。これにより経営努力では埋めがたい市場特性に依拠する格差(メディアマーケットの規模、大企業の数など)を是正し、戦力均衡を実現しようとしています。

 前者は良く知られた制度で、全国放送テレビ放映権収入やインターネット事業収入、ライセンス収入などのリーグ機構の収入が全球団に均等分配されます。グラフでは薄いピンク色の「分配金(1)」(3090万ドル)がこれに当たります。

 後者は複雑なメカニズムなためあまり正確に知られていませんが、高収入球団から低収入球団に収益を再分配する仕組みです。具体的には、球団収入の約33%を全球団がいったん拠出し、その総和を全球団に均等配分します。拠出は球団収入の多寡に比例し、配分は均等になることから、結果的に収入が多い球団から少ない球団に収益が再分配されることになります。グラフでは濃いピンク色の「分配金(2)」(3900万ドル)がこれに当たります。

 分配(1)は全球団が一律に受け取ることができるのに対し、分配金(2)は平均以下の球団しか受け取ることができない上、球団収入が低ければ低いほど分配額は多くなります。このように、MLBでは2つの収益分配制度を巧みに運用することによって、ピッツバーグのような人口数十万人の地方都市にある球団と、ニューヨークやロサンゼルスのような数百万人規模の人口を擁する大都市にフランチャイズを置く球団が健全な経営を行いながら伍して戦える土俵を整備しているのです。

 こうした収益分配制度によるサポートがなければ、エクスパンションで新規参入した球団は市場に起因する格差から長期に渡り下位を低迷し、最悪のケースでは経営破たんするリスクさえあるでしょう。

リーグ共存共栄をもたらす収益分配制度

 また、収益分配制度には隠されたもう一つの重要な機能があります。これは以前「リーグを挙げて“箱ものビジネス”をアップグレード ~MLBの成長戦略を支えた“共有サービス”の思想」でも解説しましたが、分配制度を活用して球団が新球場建設への投資を行いやすくするのです。具体的には、拠出金の算出においてスタジアム関連経費を球団収入から控除できるようにすることで、スタジアム改修・新設へのインセンティブとするのです。

 実際、MLBでは過去25年間に21の球団が新球場を手にしています。改修も含めると、ほとんど全ての球団がハードのアップグレードを行うことができたのですが、これは収益分配制度を通じた支援策の賜物と言えます。球場が新しくなれば、チケット単価は上がり、物販・協賛収入も増大します。