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 これに対して、日本では二軍は一軍と同じ12球団しかなく、独立リーグも女子を含めた4リーグに20球団しかありません。マイナーや独立リーグまで含めて俯瞰すると、日本にはまだ野球市場を拡大できる余地があるとも見ることができるかもしれません。

 球団数の観点からちょっとした思考実験をしてみました。皆さん、どのように感じられましたか? 日本球界では、もう少し球団を増やしても大丈夫そうにも見えますし、逆に赤字球団を増やすだけに終わるかもしれません。

 しかし、確実に言えることは、リーグ全体最適の視点を欠いた現在の日本球界の仕組みで今以上に球団数を増やせば、懐事情の苦しい球団ばかりが増えていくということです。なぜなら、大きな人口を抱える大都市は既存球団のフランチャイズとして取られており、新規参入球団の本拠地は相対的に商圏の小さな中小地方都市にならざるを得ないからです。

 別の言い方をすれば、共存共栄に資する発想や制度の導入なしに球団数だけでエクスパンションの実現可能性を語るのは片手落ちなのです。

球団増設で市場拡大は誤解

 先に、MLBは誕生後16球団体制が50年ほど続いた後、60年以上かけて球団を増やしてきた流れに触れました。日本でも、エクスパンション推進派の中にはこの事実を受けて、「MLBが市場拡大に成功したのは球団数を増やしたからだ」という見方があるようですが、これは誤解です。因果関係が逆なのです。

 実際は「球団数が増えたから市場(売上)が拡大した」のではなく、「市場(売上)が拡大したから球団を増やすことができた」のです。過去25年間でMLBはリーグ全体の売上を7倍以上に伸ばしていますが、この間の成長を分析すると最大の成長ドライバーはメディア収入(インターネット事業収入とテレビ放映権収入)であることが分かります。そして、球団数を増やす上で極めて重要な役割を果たすのが「収益分配制度」です。増大した収益を適切に球団に配分する収益分配制度があるからこそ、新規球団の参入が可能になるのです。

 これは、スモールマーケットに本拠地を置くMLB球団のP/L(損益計算書)を見れば一目瞭然です。熾烈な労使交渉があるため、MLB球団は財務情報を決して公開しませんが、過去に何度かリークされたことがあります。少々古い情報ですが、2008年のピッツバーグ・パイレーツの球団収入の内訳を見てみましょう。ピッツバーグ市の人口は約30万人で、日本で言えば秋田市や那覇市などと同じような規模の都市です。