イシュー・ドリブンの進化形としてのソーシャルスポンサーシップ

 米国では、ここ10年くらいでイシュー・ドリブンの進化形として、スポーツ協賛の枠組みを社会課題の解決に用いる新しい流れが生まれてきています。これを本コラムでは「ソーシャルスポンサーシップ」と呼ぶことにします。

 地域密着を掲げるスポーツ組織は古くから地域貢献活動を実施しているため、これと混同されがちなのですが、共に社会課題を解決する「地域貢献活動」と「ソーシャルスポンサーシップ」には大きな違いがあります。地域貢献活動は、基本的にコストセンター(収益を生み出さない部門)としての活動であり、本業であるスポーツ興行の合間に行う周辺活動です。これに対し、ソーシャルスポンサーシップはプロフィットセンター(収益を生み出す部門)として行う活動で、本業そのものに位置づけられる点です。

 これは企業におけるCSR(社会的責任)活動とCSV(共通価値創造)活動の違いと言えば分かりやすいかもしれません。例えば、自動車会社が「地球温暖化」という社会課題を解決しようと考えた場合、「植林してカーボンオフセットを実現する」というのはCSR活動です。一方、「電気自動車を開発して排気ガスをなくす」というのはCSVの発想です。

 植林も電気自動車の開発もいずれも地球温暖化という社会課題を解決する手段という意味では同じですが、植林しても自動車会社の事業は直接的には拡大しません。しかし、電気自動車を開発すれば、会社に新たな事業機会をもたらすことにつながります。誤解を恐れずに言えば、「地域貢献活動」と「ソーシャルスポンサーシップ」の違いは、「植林」と「電気自動車開発」の違いと同じなのです。

解決すべきイシューの拡大
解決すべきイシューの拡大

 俯瞰(ふかん)して考えれば、ソーシャルスポンサーシップは「社会が抱える課題を見つけて解決する」という意味で「イシュー・ドリブン」の一形態ということになります。つまり、ライツホルダーは、協賛企業にとどまらず、広く社会全体が抱える課題を事業拡大の範囲として捉え出したということです。

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