NCAAと5大カンファレンスの収入と放映権収入の比率(2014-15年)(単位:百万ドル)
NCAAと5大カンファレンスの収入と放映権収入の比率(2014-15年)(単位:百万ドル)
(資料:NCAA、各カンファレンス)
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 誤解を恐れずに言えば、NCAAビジネスはフットボールと男子バスケのテレビ放映権収入によって成立しているのです。言い方を変えれば、大きな収益を生み出す力があるのはこの2つの競技に限定され、これ以外の競技の運営費(コーチの人件費、遠征費など)はこの2競技から回される形になっています。

スポーツ人気が大学経営を圧迫?

 今や巨大ビジネスとなり、米国では学生生活を彩る華にもなっている大学スポーツですが、その存在感の大きさゆえに、意外かもしれませんがスポーツ人気が大学経営を圧迫しているという現実もあります。

 NCAA傘下には約1100校の大学が加盟しており、多くの大学でスポーツが巨額の収益を生み出していて、年々その売上を伸ばしています。しかし、日本ではあまり知られていませんが、大学体育局(大学内の全ての運動部のビジネスを統括する部署)で黒字化しているのは、NCAA加盟校全体で20校程度に過ぎません。

 多くの大学の体育局は赤字に苦しんでおり、学生からの授業料など体育局以外の予算から補てんを受けて運営しているのが現状なのです。スポーツ観戦は学生のキャンパスライフの重要な一部を占めているため、大学としても体育局が赤字だからと言って簡単にスポーツへの投資を止められないのです。

 そもそも、体育局単体での黒字・赤字で事の良し悪しを判断できない事情もあります。なぜなら、大学スポーツが盛んであれば多くの生徒から願書を受け付けることができる上、優秀な学生を獲得するツールにもなるためです。スポーツに大学経営を安定化させ、入学する学生の平均学力を押し上げる効果があるため、大学スポーツを保有・強化する意義やその投資対効果は、大学経営全体として論じる必要があるでしょう。

 例えば、フットボールの強豪アラバマ大学は、2007年より前年までNFL(プロフットボールリーグ)でヘッドコーチをしていたニック・セイバン氏を招聘しましたが、その直後から優秀な学生の応募が急増しました。同氏就任後、初の新入生となった2007年9月入学の学生は、高校の成績がクラス上位4分の1だった人が57%を占めました。これは、前年度の1.5倍を超える数字でした。

 こうした検証は各大学の経営判断に任されることになりますが、州によっては税金が投入される州立大学に対して何らかの規制を行うところも出てきています(D1に所属する351校中、76%に当たる234校が州立大学)。例えば、バージニア州では、州立大学体育局の収入に占める授業料からの補てんを2020年7月までに55%以内にしなければならないことが決まっています。

教育機関としてのレゾンデートルが商業化に寄与する皮肉

 このように、非常にアンバランスな収益構造の上に成り立っている大学スポーツですが、この商業化を成功させる大きな要因になっているのが「アマチュア規定」の存在です。

 「アマチュア規定」とは、簡単に言えば「学生選手はアスリートである前に学生であり、学業と両立できる範囲内でのみスポーツ活動に従事する」点を明らかにしたもので、プロスポーツ選手のようにスポーツ活動にのみ従事したり、プレーの対価として報酬を受け取ることを禁止しています(報酬を受け取れば競技資格を失う)。

 前回のコラムでも述べましたが、スポーツビジネスにおける最大のコスト要因は選手に支払う年俸で、米国のプロスポーツの場合、球団収入に占める年俸コストの比率は概ね50%程度になっています。大学スポーツでは、アマチュア規定の存在でこのコストを事実上最小化することに成功しているわけです。

 もともとこのアマチュア規定ができた1950年頃は、大学スポーツも今日のように大きなビジネスにはなっておらず、NCAAの教育機関としての役割を明確化するために策定されたものと推測することができます。しかし、皮肉にも教育機関としての存在価値を守るために作られた規定が、大学スポーツの商業化を大きく推進する秘密のレシピになっているのです。

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