NCAAの組織構造

 米国の大学スポーツは3層構造になっています。「大学」(University/College)と、その上位にあり、5~12校程度の大学がグループとなって構成している地域リーグ「カンファレンス」(Conference)、そしてカンファレンスを統括する「NCAA」(National Collegiate Athletic Association=全米大学体育協会)の3つです。

●3層構造のNCAA
●3層構造のNCAA

 イメージしやすいように日本のプロ野球に例えるなら、「大学」は読売ジャイアンツや日本ハムファイターズのような「球団」に相当し、「カンファレンス」はセ・リーグやパ・リーグのような「地域リーグ」に、「NCAA」は地域リーグを統括する「日本野球機構」に当たります。

 現在、NCAAには約1100の大学が加盟しており、これらの大学が100程度のカンファレンスを構成しています(地域性が強い)。NCAAは、この組織体制のもと23のスポーツ競技に関して約90の大会を運営しており、約4万人の学生アスリートが競技に参加しています。これがNCAAの全体像です。

 NCAAは所属大学をその規模に応じて「ディビジョンI」(D1)、 「ディビジョンII」(D2)、「ディビジョンIII」(D3)の3つに階層化しており、D1で最も高いレベルのスポーツ競技が実施されています。ちなみに、D1からD3までそれぞれ約350校、300校、450校の大学が所属しています。ディビジョン間の昇降格はありません。

大学レベルのビジネス

 前述した3層構造に応じて、NCAAのビジネスを解説してみます。まず、大学レベルから。

 今年4月、USA Today紙が2014-15年シーズンにおける大学体育局の収入ランキングを発表しました(体育局とは、大学内の全ての運動部のビジネスを統括する部署)。トップに輝いたのはテキサスA&M大学で、その収入は約1億9260万ドル(約202億円)、営業利益は8300万ドル(約87億円)を超えています。

●大学体育局の収入ランキング(2014-15年シーズン)(単位:百万ドル)
●大学体育局の収入ランキング(2014-15年シーズン)(単位:百万ドル)
(出所:USA Today)
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 数字だけ聞いてもピンとこないかもしれませんが、同年Jリーグで最も収入が多かった浦和レッズが58億5400万円だったといえば、その規模が何となくイメージできるでしょう。ちなみに、日本のプロ野球(経営情報を開示しないため、正確な球団収支は不明)は12球団で1500億円の市場を形成していると言われており、それを前提に考えれば1球団の平均収入は125億円となります。つまり、米国のトップレベルの大学は、Jリーグ球団を大きく凌駕する収益力を有しており、日本のプロ野球球団にも引けを取らない規模のビジネスを展開しているのです。

 以下は、テキサスA&M大学の収入の内訳を示したグラフです。

●テキサスA&M大学の収入内訳(単位:百万ドル)
●テキサスA&M大学の収入内訳(単位:百万ドル)
(出所:USA Today)
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 グラフを見ると、寄付金による収入が半分近くを占めていることが分かります。実は、テキサスA&M大学は建設費4億ドルを超える新スタジアムの建設を計画しており、その原資として特に近年寄付金が増えているようです。

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