また、掛け金の1%とはいえ、インテグリティ・フィーの収入もバカになりません。仮に現在1500億ドルと言われる違法スポーツ賭博が全て表に出てきたと仮定すると、フィーだけで15億ドル(約1650億円)のボリュームになります。

損した恨みが選手や審判に向けられるリスク

 一方、スポーツ賭博が解禁されたことによるリスクとしては、まずスポーツ関係者の安全上の懸念が挙げられます。賭けに負けたファンが暴言を吐いたり、最悪のケースではチャンスで活躍できなかった選手や、微妙な判定を下した審判に暴行を加えるかもしれません。実施、現在公式シーズン中の大リーグでは、最高裁判決後、審判や選手がこうした懸念を表明しています。

 また、八百長などの不正行為の誘発も大きなリスクの1つと言えます。特にこの問題で今頭を悩ませているのはテニス界で、国際テニス連盟が資金難を打開するために12年に賭博会社にライブスコアデータの販売を始めて以来、特に下部の大会で八百長が激増しているようです。有名選手も出ず、テレビ中継もされないような下部大会もデータの販売を機に賭博対象になると、獲得賞金の少ないランキングが低い選手が八百長に手を染めるようになってしまったのです(八百長した方が賞金より多額のお金が得られるため)。

 テニス界で起こっていることを考えると、高額報酬により選手が経済的に十分な利益を手にしているトッププロリーグよりは、むしろマイナースポーツや学生スポーツの方が八百長の起こりやすい状況に置かれていると言えるかもしれません。前述のようにナイト委員会がNCAAを含むアマチュアスポーツを賭博の対象として禁止するように各種政府に要請しているのも、こうした認識を踏まえたものだと思われます。

 このように、改めて考えてみるとスポーツ賭博解禁は諸刃の剣とも言え、メリットとデメリットを併せ持つものです。また、賭博は解禁されると全てのレベルのあらゆるスポーツを否応なく呑み込んでいく性格を持っています。最高裁判決を受け1500億ドルの“見えない市場”が姿を現そうとしている今、新たな事業機会の獲得とスポーツの純粋性の維持を両立する制度設計が望まれています。