また、ベンチマークを行う際に注意すべきなのは、その取り組みごとの「目的」と「手段」と「相互関係」をきちんと整理・把握することです。通常、協賛期間中には複数の協賛活動が同時並行、あるいは段階的にフェーズ展開されて行きます。それぞれの活動では何が目的とされ、別の活動にどのように結びつくのか、全体として何を成し遂げようとしているのかなどに対する有機的な理解が重要です。

構造的なアクティベーション計画の策定が肝要

 例えば、以前「なぜハイチュウはレッドソックスをスポンサーするのか?(上)」でご紹介した森永製菓の取り組みを例に取れば(詳細な解説は省くので、ご興味がある方はこの記事をご参照下さい)、消費者の購買決定プロセス(AIDMAモデルを利用)から以下の様に整理することができます。

●森永製菓ハイチュウの協賛活動のベンチマーク
●森永製菓ハイチュウの協賛活動のベンチマーク
(資料:トランスインサイト)
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 これを見ても分かるように、ハイチュウという商品自体を知らないアメリカ人が多い中で、その認知度を高め、最終的に商品の購買に至るまでのフェーズに対応した複数の協賛活動が連動して展開されています。

 先の記事でも再三指摘していますが、今の時代、単に看板広告やテレビCMで露出を増やしただけでは商品やサービスは売れません。消費者の心理を科学的に理解し、そのプロセスに沿って論理的・構造的にアクティベーション計画を策定していく必要があります。

 競合他社の取り組みをこのような形で整理してみると、これまで漠然と抱いていた協賛活動に対するイメージがグッと広がるはずです。まずはこのような形でスポーツ協賛に対する理解を深め、スポンサーシップというツールの「期待効果」を肌感覚で分かるようになることが重要です。

 私が協賛企業の相談に乗る中で、「スポーツの使い方」が分かるようになることのハードルが思ったよりも高いように感じます。アクティベーション計画は、本来自由で柔軟なものです。どの会社にも都合よく効く万能パッケージのようなものはありません。

 協賛することで(巨額の協賛金を支払うことで)使用を許される五輪関係の資産を活用して、自社の経営課題を解決するソリューションを考え出すのは、ブレインワークです。協賛企業によくある誤解は、巨額の協賛金を出せば自動的に成果の上がる“魔法の杖”が手に入るのではないかというものです。しかし、協賛は答えを導き出すツールを手にしたに過ぎません。経営課題が千差万別であるため、答えは自分で考えるしかないのです。

見えてきた懸念点

 東京五輪の公式スポンサーの顔ぶれが揃う中で、いくつか懸念点も見えてきました。まず、協賛企業数が多すぎることです。

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