組織委員会は東京五輪での公式スポンサーを、提供する権利の種類・範囲によりTier 1の「ゴールドパートナー」、Tier 2の「オフィシャルパートナー」、Tier 3の「オフィシャルサポーター」の3層構造に分けています(下図)。

●東京五輪でのスポンサーの構造
●東京五輪でのスポンサーの構造
資料:東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会の公式サイト

 このように公式スポンサーを階層化する手法はオリンピックでは一般的で、以前 「東京五輪の成否を左右する“イシュー・ドリブン”の協賛活動」でも解説したように、2012年のロンドンオリンピックでも同様の手法が取られています。ロンドン五輪ではT1、T2それぞれ7社、T3が28社の合計42社だったのに比べると、東京五輪ではT1とT2だけで既に34社が決まっており(T3は未発表)、好調なペースで公式スポンサーが決まっているように見えます。

 しかし、東京五輪のスポンサーは政財界主導で「2020年の“国家的祭り”をオールジャパン体制で支えよう」という意気込みからトップダウンで決まった感が強く、企業として何を目的に公式スポンサーとして活動するのかという、最も大切な部分の検討が後手に回っている印象を受けます。こうした協賛企業の多くは上場企業ですから、2020年までに数十億円から場合によっては100億円を超える巨額の協賛料を支払うことに対し、今後株主からの厳しい目に耐える精緻なアクティベーション(スポンサーの権利を活用した投資回収)計画を早急に練り上げて行く必要があるでしょう。

 ところで、今になって東京五輪招致活動での賄賂疑惑が浮上してきています。多額の協賛金を投資する企業にとってはその経営判断の根底を揺るがしかねない由々しき問題であり、口には出せませんが「しっかりしてくれよ」というのが本音でしょう。とはいえ、ここで歩みを止めるわけにもいきませんので、企業としては粛々と協賛計画を進めるほかありません。

公式スポンサーが最初にすべきこと

 東京五輪招致が決定してから、私のところにも多くの企業から相談が来ていますが、その多くは「これまでスポーツをビジネスのツールとして使った経験があまりない。どのように活用すれば協賛効果を高めることができるのか?」といった内容で共通しています(多くの企業で、協賛金を払うことを決定しているのに、何をするのかが具体的に決まっていないという本末転倒な状況が起こっています)。

 こうした相談に対して私が最初にお勧めするのは、欧米における同業他社が過去のオリンピックなどのスポーツイベントで行った取り組みを調べてみることです。他業種でも参考になる取り組みは多くありますが、企業が所属する業界により協賛活動で解決すべき企業経営上の問題点にクセがあるケースが多いので、まずは同業他社のベンチマークが理解しやすいでしょう。

 「東京五輪の成否を左右する“イシュー・ドリブン”の協賛活動」でも書きましたが、協賛活動とは自社が抱える経営課題を解決する1つの手段です。ただ、こうした経営課題は業界ごとに違ってくるケースも多く、例えば金融業なら「根強い横並び体質からサービスによる差別化が難しく、ブランド親和性を高めるのがポイント」、旅客運輸業なら「B2Bチャネルからの収益比率が高く、企業総務担当者や旅行代理店のおもてなしが重要」といった具合です。

 こうした“ホットボタン”(アクティベーションのツボ)は、B2C企業なのかB2B企業なのかでも大きく違ってきます。自社が身を置くカテゴリに共通する業界特性や課題は何なのか、その中で自社特有の課題は何なのかを併せて検討してみることも、協賛計画の検討を進める上では有効になるでしょう。

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