命名権保有者は運命共同体

 先に施設経営を成功させるためには施設保有者とテナントの協力関係が不可欠と述べましたが、その究極の形が「共同設立パートナー制度」です。

 米国では、施設建設に際して複数の企業が「共同設立パートナー(Founding Partner)」として名を連ね、最高位のスポンサー企業として協賛契約を結ぶことが一般的です。こうした企業は、年額1000~2000万ドル(約11~22億円)程度の高額の協賛金を支払って施設開設時から長期契約(10~20年程度)を結びます。そして、施設での独占的事業権を得るばかりでなく、設計段階から自らが事業を行いやすいようにデザインや物流体制などに口を出すことができるのです。共同設立パートナーは、文字通り施設・球団と共に球場ビジネスの中核を担い、その事業価値を高める運命共同体なのです。

 例えば、2016年にオープンし、今年スーパーボウルが開催されたNFLミネソタ・バイキングスのUS Bank Stadiumでは、以下の8社が共同設立パートナーとして10年程度の長期契約を結び、球場ビジネスの中核を担っています。

 共同設立パートナー制度におけるポイントは、協賛企業に施設設計時からの関与を促す点にあります。日本のスポーツ施設は、設計・建設が終わってから協賛企業(命名権も含む)を募るケースが一般的ですが、これは工場に例えれば、そこで何をつくるか決める前にレイアウトを決めるようなものです。自動車をつくるのか、アパレルをつくるのかによって工場に必要な設備やレイアウトが変わってくるように、協賛企業の業態やニーズによってスポーツ施設に求められるスペックも当然変わってきます。

 米国で命名権契約を結ぶ協賛企業は、前述のCitigroupのように施設の共同設立パートナーを兼ねるケースが多いです。つまり、彼らは命名権契約で単に施設の名前を買っているのではなく、球場で独占的に事業を行える権利を買っているのです。契約期間が日本に比べて長期になるのはこのためです。