日米のスポーツ施設を比較すると、残念ながらその顧客サービスレベルや集客力、収益性などにまだ大きな差があることは否めません。しかし、スポーツ施設の保有・運営スキームに日米で大きな違いはあまりありません。日米ともに大多数のスポーツ施設建設には税金が投入され、公的組織により保有されています。

米国で最も高額な命名権契約を結んでいる「Citi Field」。2009年にオープンしたMLBニューヨーク・メッツの新球場で、シティグループ(Citigroup)が共同設立パートナーとなった。(写真=山口裕朗/アフロ)

 例えば、米国の4大メジャースポーツおよび、米メジャーリーグサッカー(MLS)の126施設のうち、その70%に当たる88施設は地方自治体やその外郭団体といった公的組織により保有されています。日米で施設の保有形態に大差がないことを考えると、集客力などに違いが生じる原因は施設所有者の経営スタンスや運営手法にあると考えられます。つまり、日米では、ファシリティー・マネジメント(施設経営)の考え方が根本的に異なるのです。

 端的に言えば、これまで日本の大部分の公設スポーツ施設では、「スポーツを行う」ことが目的とされ、「スポーツで稼ぐ」ことは目的とされていませんでした。しかし、近年この方針も変わりつつあります。

 日本政府は2016年、GDP(国内総生産)を2020年までに600兆円にするという「日本再興戦略」を策定し、「スポーツの成長産業化」を10の“官民戦略プロジェクト”の1つとして提示しました。その中で、政府は2025年までにスポーツ産業の規模を現在の3倍となる約15兆円へ拡大する方針を示し、「スタジアム・アリーナ」を主な政策分野の1つに掲げました。この方針を受け、2025年までに全国20カ所に“稼げる”スタジアム・アリーナを建設することが目標とされています。

 “稼げる施設”を標榜する中で、施設経営を安定させるためにまず必要なことは、「テナント(施設を長期的に使ってくれるスポーツチーム)」と「確固たる協賛収入」の確保です。この2つは、施設建設の構想段階から調整を進めておかなければならない最重要項目です。そして、協賛収入の安定化のためには、施設の「命名権契約」と「共同設立パートナー」の導入・整備が欠かせません。しかし日本では、命名権契約については大きく誤解されているように見えるうえ、共同設立パートナーに至ってはほとんど浸透していません。

 今回のコラムでは、日米の施設経営に対する考え方の違いを踏まえながら、日本のスポーツ施設における命名権契約の価値向上に必要なことを考えてみようと思います。