プロさながらに拡大するユーススポーツ

 ところで、日本でも加熱する受験勉強による様々な弊害が指摘されているように、米国でもこうした行き過ぎたスポーツの専門化に伴うリスクが指摘されています。

 小さいころから競技を絞ると、動作が固定され、体がそれ以外の動きをしなくなるので、結果としてアスリートとしての総合的な運動能力の開発が遅れ、怪我のリスクが高まるとの指摘があります。また、本来は楽しいはずのスポーツが“仕事”になってしまった結果、バーンアウト(燃え尽き症候群)や場合によってはうつ病などの精神疾患にかかるリスクも高まるようです。ウィスコンシン大学の研究者によれば、1年の中で8カ月以上同じスポーツをする競技者は、そうでない者に比べて高い確率で練習過多に起因する怪我をすることが分かっています。

 でも、心配は要りません。怪我をすれば、ユーススポーツ専門医が適切に処置してくれますし、必要なら手術にも喜んで応じてくれます。精神的に不安定になっても、専門のメンタルコーチや心理療法士が面倒を見てくれます。「ユーススポーツ医療」という新たな産業分野の誕生です。こうして、プロスポーツ選手さながらにユーススポーツの周辺産業は雪だるま式に拡大していったのです。

 また、エクイップメントや遠征費用などに加え、こうした医療周辺サービスもタダではありません。この結果、所得の低い家庭の子供はスポーツから締め出される状況が起こっています。Sports & Fitness Industry Association(米スポーツ&フィットネス産業協会)によると、世帯所得が10万ドル(約1100万円)を超える家庭では、41%の子供が何らかのチームスポーツに参加しているのに対し、2万5000ドル(約275万円)以下の家庭では19%しかいないそうです。

 日本でも、今や学歴で人の一生が決まる時代ではなくなってきているにも関わらず、偏差値教育に基づいた受験競争が一向に沈静化する気配がないように、米国でも、必ずしも競技レベルの向上に結び付かないユーススポーツの専門化に多額のお金が費やされています。どこの国でも、子供のこととなると親は大局を見失い、合理的に振る舞えなくなるようです。

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