対策1:「同情」と「叱責」はどちらもNG

 勇気づけとは単なる甘やかしではない。アドラー心理学では甘やかしと世話焼きはむしろ勇気くじきである、と考える。なぜならば甘やかされ、世話を焼かれた人は他人からの手助けや承認に依存するようになるからだ。アドラー心理学で考える「勇気ある人間」とは、他者からの承認を必要としない自立した存在だ。決して「ほめられるために頑張る」という他者評価に依存した人ではない。

 同様に「叱られないために頑張る」というのも違うだろう。だから、叱ることもまた同様に勇気くじきである、と考える。アドラー心理学ではアメとムチ、賞罰教育を否定する。ほめたり叱ったり。甘やかしたり強制したり。そんなことをしても、依存人間を生むばかり。だからアドラー心理学ではほめないし、叱らない。そうではなく、勇気づけを継続して行っていくのだ。

 打たれ弱くため息ばかりのA子さんに勇気が欠乏しているのは先に指摘したとおりだ。そんな彼女が自立的に自分の足で立ち、必要以上に弱さをアピールしなくなるためには、まず周囲の勇気づけサポートが欠かせない。そのためには、まずは勇気くじきとなる「同情」「叱責」をなるべく減らすことが大切だろう。

 「大丈夫?」「かわいそうに……」と同情するのではなく、黙って見守るのだ。「手伝いが必要ならば声をかけてね」と支援の態度を表明し、彼女が自ら支援を求めてくるまで余計な世話を焼かない。そして、ため息や暗い表情をしていても過度に反応することをやめるのだ。「仕事に支障があるほど体調が悪ければ言ってね」。このような声かけは必要だが、そこから先は彼女に任せる。子ども扱いせずに「何かあれば自分で対応できるはず」と相手の自立を信じることが勇気づけになる。アドラー心理学ではそう考える。