沖中:最初は、カフェ・カンパニー、サントリー、博報堂クリエイティブチームで京都合宿をやって議論を重ねました。非常に白熱した議論が繰り広げられましたが、どうにもまとまらない状態が続きました。

楠本:そうですね。既に確立されていたペットボトルの「伊右衛門」というブランドの世界観があったのでそこから発想すると、どうしてもCMの世界を具現化するようなカフェをつくることになってしまうんです。でも「海外進出」も眼中にあることを理解していたので、どうしたら外国の人に日本茶を飲んでもらえるのか、そこにフォーカスした方がいいのではないかと僕らは主張してました。

 当時は外国人がグリーンティーを飲む習慣はなかった。今更、古式ゆかしい日本のティーセレモニーを伝えても、馴染みません。いまのライフスタイルに自然に馴染む形で、どれだけお茶を飲んでもらう機会を増やすか──という視点の方で、ゼロからつくる方が大事じゃないかと思ったんです。

伊右衛門サロン京都

京都で「昔風」が嫌われる理由

沖中:お店の前に伊右衛門の暖簾(のれん)を下げるかどうかでも議論は白熱しました。博報堂クリエイティブチームは、「やはり、暖簾がブランドのKEY(キー)ビジュアルなので掲げるべきではないか?」という意見がありましたが、楠本さんからは、「それではよくあるタレントショップみたいになってしまう」と。

小西:ちょうどその頃ですね。コピーライターとして「伊右衛門」を担当していた僕に、サロンの話が来たのは…。

 コンセプトが決まらないその状況を「客観的にみてどう思うか?」と尋ねられました。担当者の方には「カフェのプロの人がやるんだったらプロに任せた方がいいですよ」と最初に言ったことは覚えています(笑)。

 僕は京都の出身ですから、京都人のことは良く知っています。「お茶屋風のお店を新たに作るのは京都では無理です」と博報堂の担当者の方にも言いました。

小西利行(こにし・としゆき)氏
コピーライター/クリエイティブ・ディレクター/劇作家/絵本作家
1968年生まれ。京都府出身。大阪大学卒業後、1993年に博報堂に入社。2006年に独立し、現在のPOOL inc.を設立。これまでに手がけた広告は、500本を超える。主な広告作品に、日産自動車「モノより思い出」、サントリー「伊右衛門」「ザ・プレミアムモルツ」、プレイステーション、LEXUS、ロート製薬「SUGAO」、ホームズくん、Lifullブランド広告など。また「一風堂」の世界戦略やRope Picnicなどのファッションブランド開発、さらにホテル開発などの店舗・都市開発も手がけている。海外の権威ある広告賞である、CLIO、ニューヨークADC、ONE SHOWなど数々の広告賞を受賞。