杉本:カフェのエネルギーとか活力みたいなものを職場に持ち込めたら、それは理想なんだと思います。実際、カフェで仕事すると新しい発想が生まれる時もあるし、カフェに行ったからこういうアイデアが出たという経験は、確かにあります。

 だけど、それは最初からそこがカフェだからであって、会社をいくらカフェっぽく設(しつら)えたとしても、そうなるとは思えない(笑)。だから僕は、それがうまく成立するためには、そこに集う人、1人ひとりが相当優秀じゃないとムリだと思っているんですが…。

杉本哲哉(すぎもと・てつや)氏
グライダーアソシエイツ社長
1967年8月神奈川県横浜市生まれ。早稲田大学社会科学部卒業後、リクルートへ入社。2000年にインターネットを活用した市場調査を行なうマクロミルを設立し、2005年東証一部上場。2012年に設立したグライダーアソシエイツからキュレーションアプリ「antenna*(アンテナ)」をリリース、好評を得ている。表参道にあるコミュニティ型空間の「COMMUNE246」で期間限定店舗「antenna*<>Wired Cafe」をカフェ・カンパニーと共同運営(~2016年12月)。

楠本:確かにデザインがカフェだったらカフェになるかというと、僕もそうではないと思っています。だから「カフェのような会社」というのは、会話やアイデアなどが生まれるきっかけをつくる環境であり組織づくりだと思っているんです。

 例えば、カフェ・カンパニーではスタッフの個性を伸ばすために「スジコ組織」というのを提唱しています。組織の上長への報告、相談という縦ラインだけでなく、横ラインと斜めラインをつくっている。斜めのラインとは、近所にいる世話好きのおじさん、おばさんみたいな存在。メンターというか擬似家族にしちゃうんです。そうした組織を作ることによって、スタッフ各々の個性を、1人の上長だけの判断ではなく、みんなで伸ばせるような仕組みを敷いています。

「スジコ組織」は、社員はパズルのピースではないという発想から生まれている。パズルの場合、ピースが全部そろって会社の組織が完成する。もしひとつの部品が欠けたら、同じスペックを調達して当てはめるだけ。しかし、スジコ型なら一つひとつのイクラの形も大きさもどうとでもなる。新しい個性の粒が入ってきたら、全体の形も変わることになる。つまり、社員一人ひとりの個性を活かした形に組織全体が変わっていく。

 そのうえで、店舗のマニュアルはあえて作っていません。100店舗あってもマニュアルがない会社って大変なんですが…。マニュアルを作ると虎の巻になり過ぎてしまい、そこだけに答えを求めてしまう状況を避けるためです。マニュアルは、安心は担保できるけど、逆に人の感性や組織が硬直化してしまう可能性があるから。そういう組織になりすぎると、会話も減ってしまいます。できる限り「会話する会社」にしたいですし、「会話がはずむような組織」をデザインすることがカフェ的な会社なのだと思いますね。