日経ビジネスオンラインの読者の皆様、こんにちは。元自衛隊臨床心理士の玉川真里です。このコラムは、私が自衛隊で勤務していた時の体験をもとに、業務を円滑に回すために日々激務にさらされている読者の皆様に、とっておきの心の危機回避法をお伝えすることが目的です。

 今回は第3回目です。皆様は、ストレスが溜まった時にどのように対処されますか? 日頃は業務に追われている皆様がストレス対処を一番しやすい時期が休日ではないでしょうか。特に連休は注意が必要な時期なのです。自衛隊で自殺やメンタル不調の方が増加する時期でもあります。どうしてストレス対処をする時期が注意を要する時期か? ここが、今回のポイントです。

 休日の過ごし方を間違うと、実は大きな落とし穴になることがある。ここをしっかりと押さえていただき、よりよい休息時間としていただきたいと願っております。

 それでは、今回の事例を紹介しましょう。

休暇明けになぜか体調が悪くなる

 30代の男性でしたが、長期休暇が終わる頃から、吐き気、脱力感、頭痛、めまいなどの体調不良が続き、休暇明けから出勤ができなくなりました。彼は、組織内では係長という中間管理職の役割をしており、普段から、大人しく温厚で真面目と、周囲から評判のいい人でした。

 本人もどうして不調なのか分かりません。出勤できない自分を責められるのではないかという不安もあり、誰にも相談できずにいました。

 なぜ彼は不調になったのでしょうか? 休暇前の彼の行動を探っていきましょう。この方は休暇前に、あるプロジェクトのリーダーをしていました。

 自衛隊の中では年に1回、専門技術を競う競技会というものがあります。この方は、その競技会の1つである、武装走競技会のコーチを任命されたのでした。武装走というのは、有事の際に必要な装備品を付けて走ることです。迷彩服に半長靴(安全靴のようなブーツ)を着用し、サスペンダーに弾倉、銃剣、満水の水筒、ガスマスクなどの装具を装着し、鉄帽(重たい鉄のヘルメット)という格好に加えて、小銃を持って山中を走ります。持続的な体力の維持と機敏に行動できる技術の向上を図ることが目的ですが、装具の重量は約10キログラムと言われています。武装走競技会はグループ対抗戦で、各部隊の順位を競います。

 彼は、この武装走競技会のコーチとして、約1カ月の間、訓練をさせて、グループを優勝に導くという任務をもっていたのです。自衛隊では秋頃までが様々な訓練の過渡期であり、多くの人が休みを取れないまま、11月を迎えています。そんな中、12月にある武装走に参加する隊員は、休み返上で訓練を続けなければなりません。しかも、この訓練が過酷極まりないのですから、不平不満が出るのは必然のことでしょう。それらを一手に引き受けて、自分も過酷な訓練をしつつ、優勝を目指して邁進していました。そして迎えた競技会当日、結果は第3位。優勝を逃す結果となってしまいました。

 第3位ですから、悪い結果でもなく、当日の夜に参加者、指導者など全員での打ち上げ宴会が行なわれました。お酒も入り、みんなの気が緩んだ時に、愚痴が出るのも当然なのですが、そこで一部の隊員から「今回優勝を逃したのは、コーチの指導の仕方が悪かったからだ!」という言葉が漏れ聞こえ、彼は、それまでの緊張と重責もあって、一気に落ち込んでしまったのです。