たばこの箱のデザインを簡素に統一して、商標の代わりに健康被害を訴える写真や警告文を表示することを義務づける「プレーン・パッケージ(PP)」規制が、世界的な広がりを見せている。

喫煙抑制を目的に豪州が、世界に先駆けてPPに規制する法律を施行したのは2012年末。豪州に続き、英国とアイルランドは来年5月、フランスは来年1月にPP法が施行されていく。さらにニュージーランドでも与党が今年5月法案を議会に提出したほか、ノルウェー、スウェーデン、カナダ、シンガポール、スロベニアなどでも導入を検討している。
こうした動きに対したばこ業界は反発し提訴を繰り返しているが、一方でウクライナなど5カ国は世界貿易機関(WTO)に豪州を相手に提訴中だ。PP法が波紋を広げているのは、たばこにとどまらず、酒類や炭酸飲料、菓子など食品にも包装規制が拡大する気配をみせているからだ。公衆衛生を常に優先されると、経済活動ばかりか表現の自由をも制限される懸念が膨らんでいく。
陰惨な箱で、買う気を無くさせる
豪州で始まったPP法とは、パッケージ(箱)の魅力を低減させ消費者の喫煙意欲を削ぐことで、たばこ消費の抑制を狙ったもの。ブランドロゴをはじめ一切のデザイン要素を箱から排除。健康被害を強調する写真や警告表示を大きく掲載したり、箱の色も「茶緑色」に限定しているほか、ブランド名のフォントやサイズにいたるまでも細かく規定されている。
11年に法案が成立した直後、米フィリップ・モリス、英ブリティッシュ・アメリカン・タバコ、英インペリアル・タバコ、日本たばこ(JT)のたばこ大手4社は、簡易包装を強いる同法は違憲であると、豪政府を相手取り提訴する。だが、豪連邦最高裁は翌12年8月、「合憲」とする判断を下した。
これにより12年末から、豪州では簡易包装のたばこだけが販売されている。豪州政府は6月、新年度予算案に17年から4年間、毎年12.5%ずつ税率を上げる大幅なたばこ増税案を盛り込んだ。PP法の施行と相まってたばこを排除する政策を強化している。
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