スズキのCEO(最高経営責任者)職を辞する鈴木修会長。(写真:つのだよしお/アフロ)
スズキのCEO(最高経営責任者)職を辞する鈴木修会長。(写真:つのだよしお/アフロ)

 燃費データ不正測定問題の責任を取り、スズキの鈴木修会長(86)は兼務していたCEO(最高経営責任者)職を辞する。後任のCEOには、修会長の長男である鈴木俊宏社長(57)が就く可能性が高い。だが、もちろん、これで修会長が経営の第一線から引退することはない。

 修会長は決して引退しない。自身で「死ぬまで(経営を)やる」と主張し続けてきた。立ち位置はやや後方に下がるだろうが、影響力を保持しながら「チームスズキ」という名の新体制が構築されていくはずだ。

 ちょうど1年前の昨年6月、スズキは社長交代をしたばかりだ。鈴木俊宏社長が副社長から昇格。以来37年間続いた修氏の超ワンマン体制から、俊宏社長を中心とする集団指導体制への移行を目指していた。ところが、三菱自動車の事件をきっかけに、燃費データを不正な方法で測定していた問題が発覚してしまう。業界全体にも逆風が吹く中、スズキは、修会長はどんな決断を下すのかを考えてみたい。

 重要なのは、修会長がスズキを1:このまま独立資本で経営していくのか、2:2008年まで米ゼネラル・モーターズ(GM)と資本提携していたときのように、大手のグループの傘下に入るのか、だ。

大きな相手の力を生かすのが得意技

 スズキの経営の特徴は自称「中小企業のおやじ」の修会長による、決定の早さにある。「経験に基づくカンピューターが働く」(修会長)などと嘯(うそぶ)くが、相手の懐に飛び込むような大きな決断でも、逡巡はない。GMとの資本提携、インドでの現地生産の決断、道半ばの中国事業にしても、“先手必勝”とばかりにリスクを取って先発で入っていった。

 言い換えると、“中小企業”だけに、「大きな相手」の力を借りて成長するのは、スズキの、修会長の得意技である。

「GMは鯨、スズキは蚊。蚊ならば、鯨にのみ込まれずに高く舞い上がれる」

 これは修会長が1981年のGMとの提携会見で放った名言だが、巨大な資本提携先への強かさやしなやかさが、実際に発揮され、スズキは環境関連をはじめとするさまざまな技術力を向上させ、ブランドを拡大することができた。

 とはいえ、スズキの関係者は次のように語る。

 「修会長は迷っています。4年に及ぶ独フォルクスワーゲン(VW)との係争から、『もう、外資は懲りた』と漏らしています」

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