リーフ発売から1年半以上が経過した12年夏、ゴーン社長に筆者は取材する機会を得た。そのとき「テスラ・ロードスターのようなスポーツタイプのEVを出さないのか。GT-RやZで実績をもつ日産なら可能では」と質問した。航続距離には課題はあるが、EVはガソリン車に比べ発進や加速などの走行性能は高く、当時ロードスターはそれなりに人気になっていた。

 だが、返ってきた答えは次のとおりだった。

「まだだ。世界市場の中で需要が一番集中する(リーフに代表される)ファミリーカーに力を入れ、まずはEVの普及を図っていく。長期的には、商品ラインアップを増やしていくが」

 リチウムイオン電池をはじめとする技術を突破口に、環境意識の高い人々に向けEVを普及させていくのが、EVのリーダーである日産の基本戦略。優先するのは低炭素社会を実現するための環境技術であり、デザインや嗜好性は二の次である。

 技術を優先する思想は、トヨタのFCV(燃料電池車)「ミライ」にしても基本的に一緒。1997年発売のHV(ハイブリッド車)プリウスから、電動車両に対する日本メーカーの考え方は一貫しているとも言える。デザインは汎用的であり、嗜好品としての打ち出し方は控えめ。あくまでも環境技術を集積したエコカーなのだ。

「もっと個性が必要なのかも…」

 ちなみに、リーフの累計販売台数が10万台に達したのは14年1月。発売から3年2カ月だった。プリウスが10万台に達したのは2002年8月。4年9カ月を要した。

 時代がほぼ一世代違うから一概にはいえないが、HVプリウスよりもEVリーフの方が初期の普及は早い。プリウスが09年発売の3代目で大きく伸びたのと同じ現象は、リーフにも訪れる可能性はある。

 だが、プリウスには大きな競合がなかった。

 ゴーン社長は、リーフ発売からほぼ半年後に当たる11年6月、16年度までに仏ルノーと合わせEVを累計150万台販売するとぶち上げた(もう誰も覚えていないだろうが)。目標と現実との乖離(かいり)はあまりに大きいが、累計150万台はテスラの方が先に到達しそうな勢いでもある。

 モデル3の好調な受注を目の当たりにして、日産の中からは「尖ったデザインを採用するなど、個性的なEVの商品化を検討した方がいいのかもしれない」(日産首脳)という声さえ漏れる。