蔡京と蔡奇を重ねて

 暖房変換政策は環境保護部が主管部門だが、その対象地域の中心である北京市の党委員会と市政府が深く関わっていることは疑問の余地がない。その北京市のトップこそが北京市共産党委員会書記の“蔡奇”である。蔡奇は11月18日に発生した火災を契機として違法建築物の撤去を命じ、膨大な数の出稼ぎ労働者の住処を取り壊して、彼らを北京市から駆逐した張本人である<注4>。蔡奇は違法建築物の取り壊しを5日以内に終わらせろと命じて、無情にも出稼ぎ労働者たちを最低気温が氷点下となる寒空の下に放り出した。

<注4>11月18日に発生した火災に関連する事態は、2017年12月1日付の本リポート「寒空の北京、路頭に迷う10万人の出稼ぎ者たち」参照。

 蔡奇は、福建省“三明市”の管轄下にある“永安市”に属する“龍渓県”出身。“福建師範大学”政治教育学部を卒業した後、大学院へ進み、政治経済学博⼠号を取得した。その後は浙江省党委員会常務委員、杭州市長などを経て、2017年1月に北京市長となり、同年5月に北京市党委員会書記となり、同年10月に中国共産党中央政治局委員となった。蔡奇の経歴は福建省、浙江省と中国共産党総書記の“習近平”が歩んだ足跡と重なり、習近平によって中央へ引き上げられた人物で、習近平の寵臣の1人である。その蔡奇が北京市のトップである党委員会書記就任後に始めたのが血も涙もない違法建築物の取り壊し、出稼ぎ労働者の駆逐、違法看板標識・広告の撤去であった。さらに暖房変換政策の一翼も担った。

 人々は文頭に述べた北宋の蔡京と蔡奇を重ね合わせ、蔡奇が国を弱体化させる可能性を危惧している。両者は共に福建省出身であり、新法を廃して旧法を5日間で復活させた蔡京をまねて、蔡奇も5日間で違法建築物の取り壊しを命じている。12月5日、内部会議の席上で蔡奇が「末端に至っては、本物の刀や銃が必要で、やるなら徹底的にやり、強硬に押し切れば、問題は解決する」と述べたという情報がネット上に流出した。この高圧的な政治姿勢に反発した“清華大学”、“中国人民大学”などの卒業生たちが、12月13日に蔡奇の辞任を求める公開書簡を発表した。

 後世に蔡奇が蔡京と同様に奸臣と見なされるかどうかは分からないが、今のままでは習近平がその任命責任を追及されても仕方ない状況にあると考えられる。