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“覇座男”は誰なのか

 北京に到着した王新穎は、指定席を占拠した不埒(ふらち)な男性に対する怒りを表明するために、彼女が列車長と男性のやり取りを撮影した動画をネット上に投稿したのだった。投稿された動画は大きな反響を呼び、“覇座男(座席占領を行った男)”は誰かという“人肉検索(ネットユーザーが協力して限られた情報から人物を特定すること)”が行われた。

 その結果として判明したのは、“覇座男”は“孫赫(そんかく)”(1985年生まれの33歳、山東省莒南県出身)であり、現在は韓国“圓光大学”の博士課程在学中の人物だった。

 人肉検索で特定された孫赫は、8月22日の夜、自分の態度が極めて悪く、深く反省しているとして、ネット上に王新穎に対する謝罪表明を書き込んだ。謝罪表明の全文は以下の通り。

 ネット上で私が本人だと暴露された高速鉄道座席占領事件に関し、私は悔悟と自責の念を表明します。ここに、私は当事者となった女性と全国の人々に対して衷心よりお詫びします。私は深く反省し、この種の行為が社会のマナーに重く違反し、当事者を深く傷付け、社会に悪い影響を与えたことは、痛恨の極みです。今後はこの種の誤りを再び犯さぬように、さらに修養を積み、人としての素質を高めるよう努力しますので、どうか全国の皆さん、私に自分を改める機会を与えて下さい。

 孫赫は上述のように謝罪表明を行ったが、事態はそれで終わりとはならなかった。その翌々日の8月24日、列車No.G334 を管轄する“中国鉄路済南局集団公司”は、加害者である孫赫に対する処罰を発表し、『治安管理処罰法』第23条第1項の規定に基づき孫赫に200元(約3300円)の罰金を科すと同時に、一定期限内における列車乗車券の購入制限を付加したのだった。

 一方、8月22日早朝には、広東省「深圳駅」発で山東省「青島駅」行の高速鉄道T398の済寧区間で、“無座車票(立ち席乗車券)”を購入した、赤い上衣を着た40歳前後の女性が女子大生の購入した指定席に座り込んで占領するという事件が発生した。自分の指定席に座ろうと思ったら他人が座っているのを見た女子大生は、列車の乗務員を呼んで協力を要請した。乗務員が女性の乗車券を調べると、それは「立ち席乗車券」で、座席に座ることができない乗車券だった。そこで、乗務員が女性に席を空けるよう説得したが、女性は厚顔にも最後まで席から離れず、女子大生は座席指定の乗車券を持ちながら早朝4時から6時までの2時間をずっと立っていることを余儀なくされた。