中国政府“国家食品薬品監督管理総局”(以下「国家食薬総局」)は、11月3日付で『経営面に重点を置いた水産物の特別検査を展開する通知』を同総局のウェブサイトに掲載した。この通知は“食品安全監督管理二司(食品安全監督管理二局)”が、北京市、遼寧省、河北省、山東省、上海市など12の省・市政府の食品薬品監督管理局に宛てたもので、11月から12月にかけて、北京市、瀋陽市(遼寧省)、石家荘市(河北省)、済南市(山東省)、上海市など12の大中都市で、水産物の品質安全およびその経営面における禁止薬物の違法使用に対する重点検査の実施を通知したものだった。

通知を合図に水槽が空に

 国家食薬総局のウェブサイトにはこの種の通知が多数掲載されているし、同ウェブサイトは関係者以外で見ている人は少ないので、同通知は一般には知られていなかった。ところが、同通知の掲載から2週間が過ぎた11月17日頃から、北京市内で不思議な現象が出現し始めた。それは北京市内にある“物美(wu mart)”、“京客隆”、“超市発”など、多数の大型スーパーマーケット(以下「大型スーパー」)の“活魚(生きた魚)”売場から次々と淡水魚が消えたのである。活魚は一般に透明な水槽に入れられて販売されているが、その水槽の中に淡水魚は影も形もなかった。この現象は北京市のみならず、済南市でも見られた由で、済南市内の大型スーパー5軒で活魚売場の水槽から淡水魚が姿を消したと報じられた。

 中国の海鮮レストランなどでは、水槽の中で泳いでいる魚を客自身が選んだり、店側が選んだ魚を客に見せて了解を取り付けた後に、その魚を調理して客に提供するのが通例である。近年では中国人も海水魚を大量に食べるようになったが、魚が生きていて新鮮であることを確認できる活魚では、何と言っても河や湖に生息する淡水魚が主流であり、今ではその多くを養殖に頼っているとは言え、淡水魚の人気は高い。従い、魚料理が好きな人は活魚の淡水魚を店から買って帰り、自宅で調理して食べる。活魚は“清蒸(調味料を使わずに蒸籠で蒸すこと)”するのが一般的であり、魚が蒸し上がったら千切りにしたネギを乗せ、加熱した油と醤油をさっとかけて食べるのだが、これが非常においしい。

 淡水魚には、養殖が容易な“黒魚(ライギョ)”、“鯽魚(フナ)”、“鯰魚(ナマズ)”、“青魚(アオウオ)”、“鯉魚(コイ)”、“草魚(ソウギョ)などと、養殖が難しい“鱅魚(コクレン)”、“鰱魚(ハクレン)”、“鱸魚(スズキ)”<注3>などがあるが、代表的な料理魚として“四大家魚(四大料理魚)”と呼ばれているのは、アオウオ、ソウギョ、コクレン、ハクレンである。

<注3>“鱸魚(スズキ)”は海水魚だが、夏季には河川に入り、淡水魚になる。