“低端人口”を整理・抑制

 実は2011年4月25日にも大興区旧宮鎮で300m2を焼失する火災が発生し、死亡者17人、負傷者25人(含女児2人)を出したことがあった。火災が起きた建物は2010年に建てられた違法建築で、4階建てで38室の貸室あり、80人前後の人々が住んでいたが、消防安全措置は全く取られていなかった。死亡者17人中の13人は建物1階にあった零細なアパレル縫製工場の労働者で、外地から来た出稼ぎ者であった。この旧宮鎮の火災と聚福縁公寓の火災は6年の年月を隔てながら共通点を持っている。それは現場が工場アパートであることと、犠牲者の多くが労働集約型産業のアパレル縫製工場で働く出稼ぎ者であったことである。火災発生場所が旧宮鎮の現場から聚福縁公寓の現場まで7km南下しただけで、出稼ぎ者が犠牲となる構図は何も変わっていない。

 ところで、上述した北京市の“城郷結合部”改造計画に関連して、市内の“石景山区”、“海淀区”などの区政府が発行する公文書に、「“低端人口”を整理する」、「“低端人口”の流入を厳しく調整する」、「“低端人口”を抑制する」といった記述のあることが発見され論議を呼んでいる。“低端人口”とは「低級人口」の意味で、最下層に位置づけられる外地から流入した出稼ぎ者を指す。公文書の中であからさまに「低級人口を整理する」、「低級人口を抑制する」と記載する真意は、最下層の出稼ぎ者を北京市内から駆逐することにある。これは大都市への人口集中を抑制する政策の一環であり、北京市だけの問題ではないと思うが、出稼ぎ者を低級扱いするとは言語道断と言わざるを得ない。

 それにしても、10万人以上の人々を従来の住居から強制退去させるなら、予め然るべき受け皿となる居住場所を準備するのが為政者としての務めだと思うのだが、彼らを路頭に迷わせて泰然としている所はさすがと言うしかない。しかし、彼らは低賃金で働く最下層の出稼ぎ者が北京市にどれだけ大きな貢献を果たしているかを理解していないようだ。