12月、裁判員裁判の行方は

 2017年5月21日、しびれを切らした江秋蓮は“微信”と中国版ツイッターの“微博(Weibo)”に『涙の叫び、劉鑫、江歌の魂は貴女に出て来て証言するよう求めている』と題する文章を投稿し、事件の詳細を記した上で、劉鑫およびその父母の氏名、身分証番号、携帯電話番号などの個人情報を暴露した。この文章は注目され、“微信”で4万人、“微博”で3000万人に読まれた。同日夜、劉鑫は“微信”で江秋蓮に連絡を入れ、当該文章を削除するよう要求したが、依然として裁判で証言することを拒否したので、江秋蓮は憤然とこれを拒絶した。世論は江秋蓮に味方し、雲隠れして裁判での証言を拒否する劉鑫を非難する声が盛り上がった。

 世論の圧力に負けた劉鑫は事件発生から294日目の2017年8月23日に、江秋蓮が住む村の“村委員会”で初めて会った。しかし、劉鑫が告げた事件当時の状況は依然として自分の責任を回避する内容でしかなかった。一方、江秋蓮が不思議に思うのは、犯人の陳世峰の両親からは何一つ連絡なく、息子が殺人を犯したことに対する詫びの一言すらもないことだった。劉鑫とその両親、さらに陳世峰の両親は、たった1人の肉親である娘を他人の色恋沙汰の巻き添えで亡くした母親の気持ちをどう考えているのか。それが同じ中国人の姿とは、江秋蓮には到底信じられなかった。

 中国人留学生・江歌殺害事件の裁判は2017年12月11日から15日まで東京で裁判員裁判として行われる予定になっている。日本では1人を殺害しただけでは死刑になる可能性が極めて低いことを知った江秋蓮は、陳世峰を絶対に死刑にしたいと念願している。陳世峰に死刑判決を求めるためには署名運動が必要と知った江秋蓮は、中国で運動を開始し、あらゆる手段を通じてすでに数十万人の署名を集めた。また、11月4日に東京入りした江秋蓮は日本の支援者の協力を受けて東京の街頭で署名活動を展開した。

 裁判の結果がどうなるかは分からない。しかし、日本の裁判員が母子家庭の1人娘を巻き添えで殺された母親の気持ちを理解して、陳世峰に死刑判決を下すことを江秋蓮は念願している。陳世峰に死刑判決が下されなければ、江歌の無念は晴れないし、江秋蓮はわだかまりを抱えながら孤独な人生を歩んで行かねばならない。