劉淇一行が訪れた“林芝市”はチベット自治区の東南部に位置し、平均海抜は3100mで、ヒマラヤ山脈とニェンチェンタンラ山脈に抱かれた風光明媚な土地であり、“雅魯藏布江(ヤルンツァンポ川)”が形成した世界最深の大峡谷があることで知られている。どんなに屁理屈をこねたところで視察を行う場所とは言えず、今回の旅行は劉淇が一族郎党を引き連れてチベット自治区へ観光旅行に出かけたことは誰が考えても明白な事実である。それでは、その費用は誰が負担するのか。劉淇のように特権階級にあぐらをかく高級幹部が旅行費用を自腹で支払うはずがなく、「視察」を名目に全てを公費で賄うのである。

退職高官に年7250億元

 劉淇一行が今回の「視察旅行」でどれだけの費用を使ったのかは定かでないが、北京空港とチベット自治区の林芝空港の間を飛行機で往復するだけでもエコノミークラスで1人当たり7000元(約11万円)ほどかかるから、ファーストクラスなら1人当たり1.2万元(約19万円)かかる。劉淇一族の10人だけがファーストクラスだとしても、16人なら飛行機代だけで少なくとも16.2万元(約250万円)かかる。ましてや“包機(チャーター機)”なら、1000万円以上になるだろう。そうして考えると10月1日から6日までの5泊6日の旅行費用は2000万円近くなる可能性があるが、これらは全て公費で賄われる。これに加えて現地の公安局による警備や護衛の費用がかかるが、そうした費用は現地負担となる。

 香港誌「動向」の2014年1月号が報じたところによれば、中国で2012年時点における党・政・軍の退職高官は61万人で、その給与、福利、待遇に関わる年間総支出は7250億元(約11兆2375億円)を上回り、2012年のGDPの1.3%、財政収入の6.2%に相当したという。2012年時点で、給与、福利、待遇が最高の国家主席レベルを享受していたのは元党総書記の“江沢民”だけで、総理レベルが2人、副総理レベルが81人であった。このうち、江沢民の年間総支出は3840万元(約5億9500万円)以上で、副総理級の年間総支出の10倍に近く、81人の副総理級高官の年間総支出は3.2億元(約50億円)であった。上述した2012年時点における退職高官61万人の年間総支出7250億元は、同年の国防支出(6570億元≒10兆1835億円)および“三農(農村、農業、農民)”への投入金(5420億元≒8兆4010億円)よりも大きかった。

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