そして、2016年7月には、国家衛生・計画出産委員会、公安部などの9部・委員会が連名で『医療関連違法犯罪取り締まり強化特別行動計画案』を発表した。これは7月から1年間の期間限定で医療騒動を厳しく取り締まる特別行動を実施するというものであった。そこには、「公安局は医療機関に優秀な警察官を常駐させる」、「医療スタッフを傷つける犯罪行為があった際には、果断な措置を講じて断固これを制止し、必要な場合は法にのっとり武器や“警械(警棒、捕縄など)”を使用する」などの事項が明記されていた。

 この特別行動計画案に基づき、北京市では8月15日付で『北京市医療関連違法犯罪取り締まり強化特別行動実施計画案の通知』が発表され、特別行動計画が実施に移された。これに続くように全国各地で同計画が実施に移されている。

7割以上の医療スタッフが暴力被害

 なお、2014年に公安機関が検挙した医療関連の刑事事件は1349件で、1425人が刑事拘留され、347人が起訴されて司法機関へ移送された。2015年5月に“最高人民法院(最高裁)”が発表したところによれば、2014年に全国の“法院(裁判所)”が結審した暴力で医療スタッフを殺傷した事件は155件であった。また、『中国医師就業状況白書』が報じた2014年の調査結果によれば、57.9%の医療スタッフが言葉による暴力を受けたことがあり、13.07%の医療スタッフが身体上の傷害を受けたことがあり、暴力行為を受けたことが全くない医療スタッフはわずか27.14%にとどまった。

 こうした状況に鑑み、浙江省“杭州市”にある“浙江省中医院”では、2016年7月から「“先安検, 后看病(先に安全検査を受け、後に診察を受ける)”」のシステムを導入し、外来ホール正門と人と車の流れが比較的に多い東門に安全検査設備を設置して、医院へ入る人と車の所持品・荷物検査を行うことにした。しかし、安全検査開始後のある日の午前中の結果は驚くべきもので、午前中だけだったにもかかわらず、東門を担当していた検査係は取締り対象となる刃物を8本も押収したのだった。それら刃物の全てが医療スタッフを危険に晒す物とは思えないが、いついかなる形で凶器に変わるかは分からない。

 筆者は本リポートに過去2度にわたって中国の医療騒動に関する記事を掲載しているので、2009年7月10日付の「医師や看護師による悲痛な『白衣の座り込み』」および2012年5月18日付の「急増する医療騒動、対応に苦慮する中国の医院」を参照願いたいが、最初の記事を掲載した2009年から7年が経過した今日に至っても、医療騒動が依然として全国各地で発生していることに唖然とするばかりである。

 上述した浙江省・長興県人民医院の劉建峰医師が自身の負傷を忘れて患者の救命に尽力したことを考えると、医療スタッフが安心して診療を行える環境の整備は一刻の猶予も許されない急務である。そのためにも、7月から始まった1年間限定の「医療騒動取締り特別行動」が大きな成果を上げることを期待するものである。