李宝華が殺害されたのに比べて、劉建峰は軽傷で済んだからまだ良かったが、医師や医療スタッフが患者や患者の家族に襲われた話や嫌がらせを受けた話は枚挙にいとまがない。その典型的な例を挙げると、以下の通り。

殴りかかる、正門を封鎖…プロの関与も

《例1》
【1】2016年5月6日、江西省“南昌市”の“経済開発区”に属する“麦園村”の住人である“李某秀”(男、72歳)は身体の不調を訴えて南昌市内にある“江西省人民医院”の呼吸器内科を訪れた。検査の結果は、胸腔積水、肺部感染、高血圧、第二期糖尿病性腎症と診断され、李某秀は即座に入院を命じられた。翌5月10日の午前7時30分頃、李某秀の心臓は突然停止し、医療スタッフが懸命の救命処置を行った甲斐もなく、午前10時30分頃に医師は家族に李某秀の死亡を宣告したのだった。

【2】ところが、家族は李某秀が突然死したことで情緒不安定となり、その場にいた医療スタッフに殴りかかり、江西省人民医院の診療秩序は一時的に混乱を来した。警察は傷害罪で娘婿の“杜某平”(男、44歳)と甥の“李某国”(男、33歳)を拘留15日間と罰金500元(約7500円)に処し、弟の“李某江”(男、60歳)を公務執行妨害で10日間の拘留処分とした。

《例2》
(1)2016年9月11日の夜11時15分、雲南省“昆明市”の“西山区”にある“平安中西医結合医院”の2階にある救急診療室に“黄某某”が過剰飲酒で救急搬送されて来た。黄某某は応急措置を施されたが効果なく、30分後の11時45分に死亡した。これに対して黄某某の家族は医院の応急手当てが間に合わなかったのではないかとか、使用した薬に問題があったなどと問題を提起し、遺体を救急診療室から移動させることを許さなかった。警察が家族の説得を行った結果、翌12日の昼に家族は司法決着に同意して、遺体を葬儀場へ運び、冷凍保存した。

(2)13日の夜10時半、死者の家族が61人もの仲間を呼び集め、十数台の自動車で医院の正門を封鎖した。彼らは医院の大ホールに横断幕を掲げ、花輪を並べて医院側に話し合いを要求し、医院の秩序を混乱に陥れた。医院からの通報を受けて出動した警察部隊は家族側を説得しようと試みたが、家族側はこれを拒否したことから突入に踏み切り、61人全員を逮捕した。14日、警察は“医閙(医療騒動)”を画策・参与したとして“黄某龍”など6人を刑事拘留し、残る55人に拘留5日間の行政処分を下した。

(3)上記事件を担当した“前衛派出所”の警官によれば、同派出所の管区内には医院が4カ所(小児科医院、整骨医院、口腔医院、平安中西医結合医院)あるが、毎月少なくとも2件の医療騒動があり、医療騒動の発生が最も多いのは小児科医院であり、しかも医療騒動のプロ<注1>が関与しているケースが多発しているという。西山区の警察は今年から医療騒動には厳罰で臨んでいるが、今回のように一度に61人を拘留した例はないとのことだった。

<注1>医療騒動のプロとは、医療騒動のやり方を熟知した専門家で、患者側から雇われて騒動を指導する。彼らは医療騒動をカネ稼ぎの手段とし、医療騒動を起こすことで生計を立てている場合が多い。